今回は損保大手の東京海上、SOMPO、MS&AD3社の2022年3月期第2四半期決算内容を中心に検証し損保大手3社のおすすめランキングを検討していきます。
損保業界の現状
まず損保業界の現状を簡単にまとめていきます。
国内の損害保険業界では他の業界同様、企業再編の動きが続いており、現在は東京海上HD、SOMPOHD、MS&ADの3社を3大損保と呼び、現状3大損保会社で業界の9割以上のシェアを占めている状況です。
販売している保険の種類としては自動車関連の保険が半数以上を占めており、その他の保険としては、火災保険や地震保険等の自然災害に備えるものや新しいタイプの保険として、デジタル化やインターネットの急速な普及に伴ってサイバーリスクに備える保険等があります。
また、業界全体の流れとして国内市場は飽和状態の為、海外市場の開拓を目指し海外の企業へM&Aを行うなどして海外市場への進出を各社とも目指しています。
損保大手3社の2022年3月期第2四半期決算内容
ここからは先日発表された損保大手3社の2022年3月期第2四半期決算の内容を個別に検証していきます。
東京海上HDの決算
- 通期純利益を300億円増の3450億円へ上方修正
- 配当は期初予測から30円増額し昨年からは10円増の年間配当245円へ増配
業績好調の理由はコロナ影響の反動に加え、国内や海外における好調な保険引受および資産運用等によるものとしています。
また前年からは⾃然災害の減少等による保険引受利益の増益や、外貨建てファンドからの配当⾦の増加等による資産運用等損益の増加で全体でも増益となっています。
配当方針については利益成⻑の確度を踏まえ、配当性向50%への引上げ時期を2023年度に前倒すとしており、減配は原則しないとしています。
SOMPOの決算
- 通期純利益を530億円増の1780億円へ上方修正
- 配当は期初予測変更無く年間配当210円のまま
業績好調の要因は海外保険事業の増益に加え、損保ジャパンでの火災保険や新種保険を中心とした増収や保険引受利益が国内自然災害の減少を主因に増益になった為としています。
資産運用粗利益は国内証券や外国証券ファンドからの分配金増加を主因に増益となっています。
SOMPOの配当方針は株主還元姿勢を規律ある成長投資を実行しつつ利益成長にあわせた増配を基本方針とし、魅力ある株主還元の実現を目指すとしています。
MS&AD
- 通期純利益は期初予想から変更無しの2300億円
- 配当は期初予想から5円増の年間配当165円へ増配
海外自然災害ロスが増加したものの国内損保主要2社が国内自然災害ロスの減少や資産運用損益の増加などから増益となったことに加え、 海外保険子会社も新型コロナ影響の剥落などにより増益となっています。
配当方針については、資本政策に基づき1株あたりの配当水準の安定性を維持することを基本とし、中期的に収益力を高めることによって、増配基調を目指すとしています。
具体的な数値としてはグループ修正利益の40% ~60%を目処に、株主配当および自己株式の取得によって株主還元を行う方針です。
損保大手3社の業績等比較検証
ここからは損保大手3社の業績等を比較検証していきます。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京海上HD | SOMPO | MS&AD |
2018年3月期 | 2841 | 1398 | 1540 |
2019年3月期 | 2745 | 1466 | 1927 |
2020年3月期 | 2597 | 1225 | 1430 |
2021年3月期 | 1618 | 1424 | 1443 |
2022年3月期(会社予想) | 3450 | 1780 | 2300 |
上期最終利益(億円)
銘柄名 | 東京海上HD | SOMPO | MS&AD |
2020年3月期第2四半期 | 1166 | 439 | 1635 |
2021年3月期第2四半期 | 623 | 396 | 966 |
2022年3月期第2四半期 | 2692 | 1307 | 1248 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 44.89 | 35.83 | 114.33 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 38.50 | 27.80 | 66.94 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 78.02 | 73.42 | 54.26 |
今回の決算で東京海上とSOMPOの2社は通期最終利益を上方修正しており、最終利益は3社ともコロナ前の水準を超える好調な状態です。
コロナからの反動や自然災害の減少、資産運用損益が順調だった事が主な要因のようです。
また、東京海上とSOMPOの2社は中間決算時点での通期進捗率が70%を超えており更なる上方修正にも期待が持てるかもしれません。
配当推移
銘柄名 | 東京海上HD | SOMPO | MS&AD |
2015年 | 95 | 70 | 65 |
2016年 | 110 | 80 | 90 |
2017年 | 140 | 90 | 120 |
2018年 | 160 | 110 | 130 |
2019年 | 250 | 130 | 140 |
2020年 | 225 | 150 | 150 |
2021年 | 235 | 170 | 155 |
2022年(会社予想) | 245 | 210 | 165 |
損保3社とも配当は順調に増配傾向です。
特にSOMPOの増配幅や増配ペースは凄い勢いを感じます。
株価等指標データ
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
東京海上HD | 8766 | 5882 | 11.77 | 0.99 | 245 | 4.17 | 48.41 |
SOMPO | 8630 | 4951 | 9.82 | 0.81 | 210 | 4.24 | 40.86 |
MS&AD | 8725 | 3464 | 8.38 | 0.58 | 165 | 4.76 | 39.67 |
3社とも配当は増配傾向で配当利回りも4%を超えていますが、配当性向は50%以下とそこまで無理をしている感じでもありません。
損保大手3社の今後
そんな損保業界全体の今後ですが現状のところでも触れましたが国内市場は飽和状態であり、また現状大きな販売割合を占めている自動車関連の保険についても若者の車離れや自動運転の進化によって将来性には疑問が残っています。
そこでここからは損保大手3社の今後の企業方針について個別にまとめています。
東京海上HDの今後
中期経営計画の方針を⻑期ビジョンの実現をめざし、ビジネスモデルの変⾰と保険本業の収益⼒向上を軸に実⼒を⾼めていくとしています。
ちなみに東京海上の長期ビジョンは世界のお客様へ安心をお届けし成長し続けるグローバル保険グループとしています。
その海外事業の拡大については今後もグローバルなリスク分散と適切なリスクコントロールにより成⻑を加速するとしており、M&Aについてはリスク分散・利益成⻑に寄与し、企業価値向上に貢献する案件のみを対象とし厳格な規律を持って実⾏するとして買収3原則のターゲットにカルチャーフィット、高い収益性、強固なビジネスモデルを挙げています。
また気候変動は保険業界にとって「リスク」だが、成⻑に向けた「機会」でもあると捉えカーボンニュートラル実現に向けた世界的なうねりを、企業価値向上に繋げていくとしています。
SOMPOの今後
中期経営計画でSOMPOのサステナブルな成長ストーリーとしてユニークさを軸にパーパスの実現を目指し、SOMPOのサステナブルな成長につなげるとしており、その為にも足もとの成果を着実に積み上げていく方針です。
目的という意味の英単語ですが最近のビジネス用語では存在意義という意味で使われています。
SOMPOのパーパスとしては”安心・安全・健康のテーマパーク”により、 あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに 楽しむことのできる社会を実現するとしています。
具体的にSOMPOはSDGsなどの社会課題や保有データの視点から注力する5領域を選定しています。
- 介護 介護業界の品質を伴う生産性の向上
- 防災、減災 災害予測による被害範囲等の極小化
- モビリティ 移動弱者へのサービス最適化
- 農業 農業事業者の業務効率化・収益改善
- ヘルシーエイジング データ起点での健康寿命の延伸
現時点では介護領域での取組みが先行していますが、介護業界での大手事業者である当社を実証基盤として、業界の品質と生産性向上を実現するための新たな価値を創造・提供するとしています。
また「規模と分散」「新たな顧客価値の創造」の実践により、経営数値目標の達成確度をさらに高めていくとしており、今後国内損保における収益構造改革、海外保険における保有比率の引き上げも着実に実行する方針です。
MS&ADの今後
世界トップ水準の保険・金融グループのスケールとクオリティ、社会構造の変化に対し、迅速に対応できる態勢構築を実現するとしています。
具体的にはデジタル化の加速、次世代モビリティ社会の到来、新しいリスクの 発現、サステナビリティ課題への取組み等、社会構造の変化を見据え、迅速に対応できる態勢を構築するグループの強み(多様性・資本・人財・顧客基盤等)を最大活用し、グループ各社による役割分担(国内損保保険、リスク関連サービス、金融サービス、海外事業)見直しと連携強化を図りグループ総合力を発揮するとしています。
また社会変化への対応、安定的な収益基盤の構築に向けて、事業ポートフォリオを変革するとしており国内損害保険事業の収益を堅持しつつ、海外事業・国内生命保険事業の収益を拡大し、まずは国内損害保険事業以外で利益の50%を 実現し将来的に、海外事業の利益をグループの50%にまで引き上げるステップとするとしています。
損保大手3社のおすすめランキング
今回は損保大手3社の中間決算を中心に投資判断を検証しました。
3銘柄とも現状業績は好調で通期純利益はコロナ前の水準を超えてくる予想になっています。
しかし、損保業界の今後については途中で触れましたように現状の自動車関連保険からの収益ポートフォリオの変革は共通の課題です。
今後については各社とも現状の基盤を守りながら海外への進出を強化しつつ、新たな保険の販売を行っていく流れになるかと思いますが、個人的に現状と今後を踏まえたうえでおすすめランキングを決めたいと思います。
正直各銘柄に大きな差はない為難しいところですが、現時点で3位はMS&ADにしたいと思います。
今回の決算でも他の2銘柄と比較して少し見劣りする内容でしたので、もう少し様子を見たいところです。
上位2銘柄の判断は難しいところですが2位を東京海上、1位はSOMPOにしたいと思います。
企業規模は東京海上が1番なのですが、現状SOMPOの方が配当利回りは高く配当性向が低い点や株価的にSOMPOの方が購入しやすい点で1番にしました。
以上のように今回は若干強引に順位を付けましたが、3銘柄とも高配当銘柄として十分検討可能だと思いますので引き続き動向は見守りたいと思っています。
まとめ
損保大手3社のおすすめランキングはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。
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