今回は日本郵政グループの中で上場している日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が高配当銘柄として投資可能か検証しています。
日本郵政グループとは
そもそも日本郵政グループとは 2005年小泉内閣により郵政民営化法案が可決・成立した事を踏まえ 日本郵政公社から事業を引き継ぐにあたり、日本郵政株式会社が2006年に発足しています。
2007年に郵政民営・分社化に伴い日本郵政公社が解散し郵政三事業を含む全ての業務は日本郵政株式会社及びその下に発足する4つの事業会社(郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険)へ移管・分割されました。
その後2012年に郵便事業株式会社を郵便局株式会社に吸収合併させ日本郵便株式会社とし、2015年11月に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社が東証一部に上場しています。
現在は日本郵政グループの持ち株会社として日本郵政株式会社が上場しており、子会社で非上場の日本郵便、上場しているゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を日本郵政グループと位置付けています。
日本郵政グループの現状
日本郵政は現在子会社の株式を下記の割合で保有しています。
- 日本郵便 100%
- ゆうちょ銀行 約89%
- かんぽ生命保険 約49.9%
当初は2017年9月30日までにゆうちょ銀行と、かんぽ生命保険の株式を全て売却して完全民営化となる予定でしたが、郵政民営化見直しでゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式売却についても具体的な期限は廃止されました。
しかし経営の自立性・自由度を広げる観点から、2025年度までのできる限り早期にゆうちょ銀行とかんぽ生命の保有割合を50%以下とすることを目指しており、金融2社の株式の売却が進んだ場合には、日本郵政の連結財務諸表に反映される金融2社の利益が減少する事になります。
という事でかんぽ生命保険については現状当面の目標である50%を下回っていますが、ゆうちょ銀行に関しては今後約4割弱の株式を2025年度までに売却予定となっています。
また、2021年10月財務省は日本郵政の発行済み株式総数の約27%にあたる約10.2億株を売り出すと発表しています。
郵政民営化法は政府に発行済み株式総数の3分の1超の郵政株を持つよう義務づけていますが、今回の売り出しにより、政府の保有比率は6割から法定の下限に近づいています。
また、3度目となる今回の売り出しはもっと早くやる予定でしたが、かんぽ生命保険による不正販売などの不祥事が相次ぎ、株価も低迷したことで先送りしていました。
日本郵政グループの2022年3月期第2四半期決算
ここからは先日発表された日本郵政グループの2022年3月期第2四半期決算の内容を個別に検証していきます。
日本郵政株式会社
- 通期最終利益を1400億円増の4800億円へ上方修正
- 年間配当は50円で変更無し
日本郵政の配当方針については2026年3月期末までの間は1株当たり年間配当50円を目安に、安定的な1株当たり配当を目指す方針としています。
日本郵政については株式を保有している子会社の業績が保有比率によって影響を受けます。
今回の上方修正は約89%の株式を保有しているゆうちょ銀行の業績上方修正の影響を受けた事が大きな要因です。
ゆうちょ銀行
- 通期最終利益を900億円増の3500億円へ上方修正
- 配当は期初予測から7円増額で昨年からは3円減の年間配当47円
- 500株以上保有の株主を対象にオリジナルカタログ(3000円相当)の株主優待を新設
ゆうちょ銀行の配当方針は中期経営計画期間中(2021年度~2025 年度)は、基本的な考え方として、配当性向50%程度とする方針です。
ただし、配当の安定性・継続性等を踏まえ、配当性向50~60%程度の範囲を目安とし、1株当たり配当金は2021年度の当初配当予想水準からの増加を目指すとしています。
かんぽ生命保険
- 通期最終利益は1180億円で変更無し
- 年間配当も90円で変更無し
- 不正販売を受けて控えていた保険販売の勧誘を4月から本格再開も厳しい状況が続く
かんぽ生命の配当方針は今後の利益見通し財務の健全性を考慮しつつ、1株当たり配当について中期経営計画期間(2021年度~2025年度)は原則として減配は行わず増配を目指す
方針としています。
日本郵政グループの業績等比較
ここからは日本郵政グループの業績や株価等のデータを比較検証します
最終利益推移(億円)
まず日本郵政グループの決算後の業績を比較していきます。
ここでは上場はしていませんが日本郵政が100%株式を保有している日本郵便も含めた4社の業績を2018年からまとめています。
銘柄名 | 日本郵政 | 日本郵便 | ゆうちょ銀行 | かんぽ生命保険 |
2018年3月期 | 4606 | 584 | 3527 | 1044 |
2019年3月期 | 4794 | 1266 | 2661 | 1204 |
2020年3月期 | 4837 | 871 | 2734 | 1506 |
2021年3月期 | 4182 | 534 | 2801 | 1661 |
2022年3月期(会社予想) | 4800 | 800 | 3500 | 1180 |
上期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本郵政 | ゆうちょ銀行 | かんぽ生命保険 |
2020年3月期第2四半期 | 2365 | 1448 | 763 |
2021年3月期第2四半期 | 1789 | 1242 | 936 |
2022年3月期第2四半期 | 2651 | 2353 | 805 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 48.89 | 52.96 | 50.66 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 42.77 | 44.34 | 56.35 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 55.22 | 67.22 | 68.22 |
日本郵政は子会社の業績が株式の保有比率に応じて影響を受けますが子会社3社の業績を比較するとゆうちょ銀行の業績が断トツで大きい事が分かるかと思います。
利益の大きいゆうちょ銀行の株式を約89%保有している為、日本郵政の業績はゆうちょ銀行の影響を大きく受けます。
そして先程説明したように日本郵政は今後金融2社の株式を2025年までに50%以下、将来的には完全に売却するとしていますので、金融2社に頼らない収益構造の確立は大きな課題です。
そしてその業績好調のゆうちょ銀行についてですが、好調の要因は資金収支等が大きく増加した事が要因です。
資金運用に係る売却損益や分配金による収支の事
ゆうちょ銀行は性質上、民間銀行のように企業や個人に資金を貸し出して金利を得る事や、預かり資産に制限がある為、投資信託等の販売手数料収入にも限りがありますので、収入源の多くを資産運用に頼っている状況です。
しかし、資産の性質上あまりリスクの大きい商品にも投資出来ませんので国債や外国債券、投資信託が中心となっている状況です。
かんぽ生命については第2四半期時点ではここ数年と比較してそこまで悪くない決算に見えますが、不正販売問題からの回復状況は芳しくなく通期最終利益は大幅減益となっています。
配当推移
銘柄名 | 日本郵政 | ゆうちょ銀行 | かんぽ生命保険 |
2015年 | 11.13 | 49.27 | 40.88 |
2016年 | 25 | 15.14 | 56 |
2017年 | 50 | 50 | 60 |
2018年 | 57 | 50 | 68 |
2019年 | 50 | 50 | 72 |
2020年 | 50 | 50 | 76 |
2021年 | 50 | 50 | 76 |
2022年(会社予想) | 50 | 47 | 90 |
日本郵政とゆうちょ銀行の配当は50円付近で安定しています。
ゆうちょ銀行は今期の配当を当初10円減配の40円予測としていましたが、先日の決算で7円増額し年間配当47円となっています。
かんぽ生命は不正販売問題が発覚した際も減配はせず増配傾向なのが分かるかと思います。
配当方針について日本郵政は2026年までは50円を目安に、ゆうちょ銀行は2025年度までは配当性向50%から60%を目安に、かんぽ生命も同じく2025年度までは減配は行わず増配を目指す方針としています。
株価等指標データ
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本郵政 | 6178 | 868.3 | 6.8 | 0.24 | 50 | 5.76 | 39.24 |
ゆうちょ銀行 | 7182 | 929 | 10.0 | 0.30 | 47 | 5.06 | 50.32 |
かんぽ生命保険 | 7181 | 1748 | 5.9 | 0.26 | 90 | 5.15 | 30.47 |
こちらに3銘柄の株価等指標データをまとめています。
3銘柄とも配当は安定していますが株価が下落傾向という事もあり配当利回りは5%を超えています。
しかし配当性向は1番高い銘柄でも50%付近の為、そこまで無理をしている感じではないです。
日本郵政グループの今後
ここからは日本郵政グループの今後を個別で見ていきます。
日本郵政の今後
日本郵政については先程も触れたように具体的な期限は廃止されましたが、将来的にはゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を全て売却しないといけません。
全て売却すると現在日本郵政の業績に大きな利益を生み出している金融2社の業績が反映されなくなりますので、日本郵便の売上を伸ばすか新しい収益源を確立する必要があります。
そこでまず日本郵便の今後ですが、デジタル化の徹底によるデータとモノのスピード差や、配達先情報等の保有するデータを活かし、 荷物分野の競争激化に打ち勝つ配送サービスを提供するとしたり、国際物流事業については不採算事業からの撤退及び合理化によるコスト削減や豪州に依存した経営構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成⾧を目指すとしています。
そして日本郵政と日本郵便は新たな成長に向けて楽天グループとの業務提携を発表したり、アフラック生命保険や地方銀行との提携で金融部門を強化しています。
また不動産事業を郵政グループの収益の柱の1つとなるよう成長させるとして郵船不動産の株式取得等で不動産部門でも収益をあげようとしているところです。
ゆうちょ銀行の今後
中期経営計画(2021年度~2025年度)を「信頼を深め、金融革新に挑戦」する5年間と位置づけており、具体的にはDX推進としてリアルとデシタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革やデジタル技術を活用した業務改革、生産性向上を方針としています。
そしてゆうちょ銀行は、約24,000の郵便局ネットワークを通じて全国のお客さまに良質な金融サービスを提供しながら、同時に収益性・効率性改善に向けた取組みにも着手するともしています。
かんぽ生命保険の今後
中期経営計画(2021年度~2025年度)の基本方針をお客さまから真に信頼される企業へと再生し、お客さま体験価値を最優先とするビジネスモデルへ転換することで、持続的成長を目指すとしています。
日本郵政グループの投資判断
今までの検証をもとに日本郵政グループの投資判断を個別に検証したいと思いますが各銘柄とも現状は課題の部分の方が多く見えるような気がします。
まず日本郵政ですが1番の注目点はゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式売却の時期です。
とりあえずは保有割合50%以下の目標である2025年度までに金融2社の業績に頼らなくても収益を上げられる体制を確立出来るかが注目ですので、それまでは様子を見たいところでもあります。
ゆうちょ銀行については約24,000の郵便局ネットワークと約190兆円の貯金残高という他社が追随出来ない企業規模を活かせるかがポイントだと思います。
現状は多すぎる郵便局の数が非採算的な部分として目立っていますので、膨大な貯金残高同様現在持っている資産を有効活用出来るかがポイントです。
かんぽ生命については不正販売問題から復活出来るかを見守りたいところです。
信頼を回復しつつ業績も伸ばしていくという難しい問題を今後達成出来るかがポイントになるかと思います。
まとめ
今回は日本郵政グループの投資判断について検証しましたが3銘柄とも現状は積極的には狙いにくいというのが本音です。
配当こそ安定傾向ですが、業績の先行きには不透明な部分も多いです。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命には将来的に日本郵政による株式売却の問題もあり株価の先行きにも不安な点があります。
しかし、企業規模や企業形態は日本を代表する銘柄だと思いますので中長期の視点で購入時期を検討する位の気持ちの余裕を持って業績や株価動向を見守りたいとは思います。
日本郵政グループの投資判断についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。
にほんブログ村
コメント