現在東証には4000社近い企業が上場していますが、なかには当然同じ業種内に企業規模や業績が似ている企業も存在します。
同じ様な銘柄が投資対象として存在する場合、どちらの銘柄に投資した方が良いのか迷う場合もあるかと思います。
そこで今回は日本を代表する3つの業種において、それぞれ業界内の上位2銘柄を比較検証していきます。
商社業界(三菱商事、伊藤忠)
最初の銘柄は商社業界から総合商社の三菱商事と伊藤忠の2銘柄です。
三井物産、住友商事、丸紅を含めた5大総合商社の1角とされている2社ですが、企業規模や業績の部分でも三菱商事と伊藤忠の2社が商社業界内のトップ2銘柄になります。
そんな2社の特徴ですが、三菱商事は三菱グループとして抜群の総合力を誇っており、伊藤忠は非資源部門や中国市場に強みを持っています。
また、ウォーレンバフェット氏が保有している事でも知られる5大総合商社ですが、4月には更なる買い増しが報じられた事でも話題になりました。
三菱商事直近決算
三菱商事は5月9日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は1兆1806億円と2431億円の増益、配当は30円増配の年間180円としています。
今期予測は最終利益が9200億円と2606億円の減益見込みとしていますが、配当は20円増配の年間200円で発表しています。
伊藤忠直近決算
伊藤忠は5月9日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は8005億円と197億円の減益となっていますが、配当は30円増配の年間140円としています。
今期予測は最終利益が7800億円と205億円の減益見込みとしていますが、配当は20円増配の年間160円で発表しています。
通期最終利益比較(億円)
銘柄名 | 三菱商事 | 伊藤忠 |
2019年3月期 | 5907 | 5005 |
2020年3月期 | 5353 | 5013 |
2021年3月期 | 1725 | 4014 |
2022年3月期 | 9375 | 8202 |
2023年3月期 | 11806 | 8005 |
2024年3月期(会社予想) | 9200 | 7800 |
2019年からの通期最終利益を比較していきますが、2社ともコロナショックの影響を受けた2021年にかけては減益となり、特に三菱商事は前期比で7割近い大幅減益となっています。
2022年以降はコロナからの経済回復を受けて2社とも大きく増益となっており、三菱商事の前期最終利益は商社業界初の1兆円超となっていますが、今期は2割近い減益予測となっています。
伊藤忠の前期業績は8000億円台で減益となっていますが、今期予測は微減益に留まっています。
2社の業績推移を見ると三菱商事の方が変動が大きく、伊藤忠の方が変動は小さくなっていますが、この辺りは三菱商事の方が資源価格の影響を大きく受ける状況を反映している印象です。
配当推移比較
銘柄名 | 三菱商事 | 伊藤忠 |
2015年 | 70 | 46 |
2016年 | 50 | 50 |
2017年 | 80 | 55 |
2018年 | 110 | 70 |
2019年 | 125 | 83 |
2020年 | 132 | 85 |
2021年 | 134 | 88 |
2022年 | 150 | 110 |
2023年 | 180 | 140 |
2024年(会社予想) | 200 | 160 |
2015年からの配当推移を比較していきますが、2社とも据え置きの年すらなく順調に増配が続いており、特にここ最近の増配幅は業績好調を背景に大きくなっています。
そして2社とも2015年と比較すると3倍近い水準へ配当が増えています。
また、三菱商事と伊藤忠は2社とも配当方針に原則として減配せず、配当の維持もしくは増配を行う累進配当を導入していますので今後の配当推移も楽しみです。
株価推移比較
株価推移を比較していきますが、2社とも好調な業績と連動し右肩上がりの状況で、今年4月にバフェット氏の商社株買い増しが報じられて以降は上昇ペースも加速しています。
バフェット氏の商社株購入が最初に報じられたのは今から約3年前の2020年8月でしたが、当時の株価と比較すると2社とも2倍以上の水準へ株価は上昇しています。
株価指標比較(2023年6月16日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱商事 | 8058 | 6925 | 10.6 | 1.21 | 200 | 2.89 | 30.7 |
伊藤忠 | 8001 | 5652 | 10.5 | 1.71 | 160 | 2.83 | 29.8 |
三菱商事と伊藤忠の株価指標を比較していきますが、2社とも最近の配当は大きく増配となっていますが、株価も凄いペースで上昇しているため配当利回りは2%台後半まで低下しています。
今期業績は2社とも減益見込みですが数年前と比較すると大きく伸びている事もあり、PERは市場平均と比較して割安で、配当性向は両方とも30%程度と余裕のある水準です。
投資判断
今までの内容から三菱商事と伊藤忠の投資判断について、2社とも今期業績は減益見込みですが数年前と比較すると大きく伸びており、配当も増配傾向です。
ただ、好調な業績と連動して株価も大きく上昇しており、配当利回りは2%台まで低下しています。
2社とも累進配当を導入しており今後の増配も期待できますが、現在の好業績は商品市況上昇の影響が大きいため、今後の反動は懸念材料です。
また、バフェット氏は更に商社株を買い増す事も検討しており、将来的な協業にも期待を込めていると報じられています。
以上の点を踏まえると個人的に現在保有している5大総合商社は伊藤忠、三井物産、丸紅の3社ですが、トップの三菱商事もいずれは購入したい銘柄です。
銀行業界(三菱UFJFG、三井住友FG)
2つ目の銘柄は銀行業界から三菱UFJFGと三井住友FGの2銘柄です。
日本には地方銀行を含め様々な銀行が存在しますが、企業規模や業績などの部分において三菱UFJFGと三井住友FGの2社がトップの2銘柄になります。
そんな三菱UFJFGは三菱UFJ銀行を中核に三菱UFJ証券やリースの三菱HCキャピタルなども傘下にしており、三井住友FGは三井住友銀行やSMBC日興証券などを傘下にしています。
そして2社とも国内市場は飽和状態である事も踏まえ、海外市場への進出も積極的に進めています。
三菱UFJFG直近決算
三菱UFJFGは5月15日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は1兆1164億円と144億円の減益となっていますが、配当は4円増配の年間32円としています。
今期予測は最終利益が1兆3000億円と1836億円の増益見込みとしているなか、配当は9円増配の年間41円で発表しています。
三井住友FG直近決算
三井住友FGは5月15日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は8058億円と992億円の増益、配当は30円増配の年間240円としています。
今期予測は最終利益が8200億円と142億円の増益見込みとしているなか、配当は10円増配の年間250円で発表しています。
通期最終利益比較(億円)
銘柄名 | 三菱UFJ | 三井住友FG |
2018年3月期 | 9896 | 7343 |
2019年3月期 | 8726 | 7266 |
2020年3月期 | 5281 | 7038 |
2021年3月期 | 7770 | 5128 |
2022年3月期 | 11308 | 7066 |
2023年3月期 | 11164 | 8058 |
2024年3月期(会社予想) | 13000 | 8200 |
2018年からの通期最終利益について、2銘柄ともコロナショックの影響を受けた2021年にかけては減益となる年もありましたが、2022年以降の業績はコロナショックによる倒産に備えていた与信関連費用の戻り入れなどの影響で増益基調となっています。
特に三菱UFJFGの業績は大きく伸びており、前期はMUB株式譲渡に絡む損失が発生した事などにより減益となっていますが最終利益は1兆円を超えており、今期は大幅増益の予測にしています。
三井住友FGは、三菱UFJFGほどの上昇ペースではありませんが順調に増益が続いており、安定している印象です。
配当推移比較
銘柄名 | 三菱UFJ | 三井住友FG |
2015年 | 18 | 140 |
2016年 | 18 | 150 |
2017年 | 18 | 150 |
2018年 | 19 | 170 |
2019年 | 22 | 180 |
2020年 | 25 | 190 |
2021年 | 25 | 190 |
2022年 | 28 | 210 |
2023年 | 32 | 240 |
2024年(会社予想) | 41 | 250 |
2015年からの配当推移について、たまに据え置きの年はありますが減配はなく順調に増配傾向です。
そして2銘柄とも最近の増配幅は好調な業績と連動して大きくなっており、特に三菱UFJFGは今期の配当を一気に9円の増配と20%以上の増予測で発表しています。
そんな2社の配当方針は、2銘柄とも配当性向40%を目標に累進的な配当を目指すとしていますので、今後の配当推移も楽しみな2社です。
株価推移比較
三菱UFJFGと三井住友FGの株価推移を比較していきますが、2銘柄ともコロナショックで大きく売られた後は上下を繰り返しながらも右肩上がりの状況でした。
そして去年年末の日銀による長期金利上限幅引き上げをきっかけに金利先高観が強まった事で更に急騰しています。
その後、今年3月にはシリコンバレー銀行の破綻による世界的な金融市場への不安感から大きく反落する場面はありましたが、金融不安の後退や好調な本決算を受けて直近株価は2銘柄とも値を戻してきています。
株価指標比較(2023年6月16日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱UFJ | 8306 | 985.8 | 9.1 | 0.69 | 41 | 4.16 | 37.9 |
三井住友FG | 8316 | 5843 | 9.5 | 0.61 | 250 | 4.28 | 40.6 |
2銘柄とも最近の株価はここ数年の高値圏で推移していますが、配当は増配が続いている事もあり配当利回りは4%台前半で推移しています。
業績好調によりPER、PBRは市場平均より割安で、配当性向は三菱UFJFGが38%付近と40%の目安にわずかに届かず、三井住友FGは方針通りの40%付近です。
投資判断
今までの内容から三菱UFJFGと三井住友FGの投資判断ですが、2銘柄とも業績、配当は順調に推移しており、配当利回りや配当性向もほぼ同じ様な水準です。
日本を代表する金融グループとして積極的に進めている海外進出も今後更に期待できますので、十分高配当株として投資できる銘柄だと思います。
ただ、2銘柄で大きく違うのは最低購入金額で三菱UFJFGは10万前後で購入可能なのに対し、三井住友FGは60万円付近になってしまいますので、買いやすいのは三菱UFJFGかなと思います。
通信業界(NTT、KDDI)
最後の銘柄は通信業界からNTT、KDDIの2銘柄です。
通信業界は参入障壁の高さなどから特に携帯電話事業は手掛けている企業自体が少ないですが、NTTとKDDIの2社が企業規模や業績の部分でもトップ2銘柄になります。
しかし、直近の業績は2社とも通信料金値下げの影響が出ている状況です。
そんななか国内の携帯電話事業は飽和状態である事も踏まえ、2社とも通信事業以外の分野へ注力しています。
NTT直近決算
NTTは5月12日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は1兆2131億円と321億円の増益、配当は5円増配の年間120円としています。
今期予測は最終利益が1兆2550億円と419億円の増益見込みとしているなか、配当は年間5円で発表しています。
また、NTTは6月30日を基準日とする株式の25分割を発表しています。
KDDI直近決算
KDDIは5月11日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は6774億円と50億円の増益、配当は10円増配の年間135円としています。
今期予測は最終利益が6800億円と26億円の増益見込み、配当は5円増配の年間140円で発表しています。
通期最終利益比較(億円)
銘柄名 | NTT | KDDI |
2019年3月期 | 8545 | 6176 |
2020年3月期 | 8553 | 6397 |
2021年3月期 | 9161 | 6514 |
2022年3月期 | 11810 | 6724 |
2023年3月期 | 12131 | 6774 |
2024年3月期(会社予想) | 12550 | 6800 |
2019年からの通期最終利益を比較していきますが、2社ともコロナショックの影響もなく増益が続いており、特にNTTのここ数年の増益幅は数年前と比較して勢いが付いています。
KDDIの最終利益も減益の年はありませんが6000億円台で安定しており、また前期は大規模通信障害の問題もありぎりぎりの増益着地でした。
2社とも通信料金値下げの影響はありましたが、NTTは企業のデジタル変革の取り組みが急速に広がり国内外でITサービスの需要が増えたことや、テレワークの拡大で家庭向けのインターネットサービスの契約が増えたために増益が続いており、KDDIはDXや金融事業などの成長領域でカバーしている状況です。
配当推移比較
銘柄名 | NTT | KDDI |
2015年 | 45(1.8) | 56 |
2016年 | 55(2.2) | 70 |
2017年 | 60(2.4) | 85 |
2018年 | 75(3) | 90 |
2019年 | 90(3.6) | 105 |
2020年 | 95(3.8) | 115 |
2021年 | 105(4.2) | 120 |
2022年 | 115(4.6) | 125 |
2023年 | 120(4.8) | 135 |
2024年(会社予想) | 5 | 140 |
2015年からの配当推移を比較していきますが、2社とも減配はもちろん据え置きの年すらなく順調に増配傾向です。
また、NTTの今期配当見込みは年間5円としていますが、先程お伝えした株式の25分割を発表していますので、実質的には年間125円で5円の増配となります。
そして前期以降の配当額についても分割を考慮した金額をカッコ内に記載しています。
KDDIの配当も6000億円台で安定していた業績と比較すると大きく伸びており、2銘柄とも2015年と比較すると2倍以上に増えています。
2社の配当方針について、NTTは株主還元の充実は当社にとって最も重要な経営課題の一つとし継続的な増配の実施を基本的な考え方としていますが具体的な目安は掲げておらず、KDDIは配当性向40%超を目安にしています。
株主優待比較
NTTとKDDIには株主優待がありますので内容を比較していきます。
NTT株主優待
NTTは100株以上保有を条件に2年以上3年未満の継続保有で1500ポイント、5年以上6年未満の保有で3000ポイントのdポイントがもらえます。
株式の25分割後でも100株保有の条件は変わらないとの事ですが、同一の株主番号でもらえる最大ポイントは4500ポイントとなっています。
KDDI株主優待
KDDIには保有株数や保有継続年数によってカタログギフトがもらえる株主優待がありますので、内容を表にまとめています。
KDDI | ||
保有株数/保有年数 | 5年未満 | 5年以上 |
100株~999株 | 3000円相当 | 5000円相当 |
1000株以上 | 5000円相当 | 1万円相当 |
ランクアップのためには、保有株数で1000株以上、保有継続年数は5年以上とかなりハードルは高めですが、狙いたくなる株主優待です。
株価推移比較
株価は2社とも通信料金の値下げ圧力を受けた2020年10月頃に大きく売られる場面があり、その後も停滞する時期はありつつも右肩上がりの状況でした。
しかし2銘柄とも去年後半以降は反落する場面もありましたが、直近は再びじわじわ上昇しています。
株価指標比較(2023年6月16日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
NTT | 9432 | 4083 | 11.1 | 1.63 | 125 | 3.06 | 33.9 |
KDDI | 9433 | 4490 | 14.2 | 1.89 | 140 | 3.12 | 44.4 |
2銘柄とも最近の株価はじわじわ上昇していますので、順調に増配は続いていますが配当利回りは3%前後となっています。
業績は過去最高益が続いていますがPERに割安感はそれ程なく、配当性向はNTTで34%付近、KDDIで44%付近と余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容からNTTとKDDIの投資判断について、配当利回りや指標面、増配ペースに大きな違いはありませんが、業績の伸びはNTTの方に勢いがあります。
また、NTTは株式の25分割により7月から最低購入金額が2万円以下まで下がる点も購入しやすいポイントですが、株主優待はKDDIの方に魅力を感じます。
以上の点を踏まえると、基本的にはNTTの方がおすすめに思えますが、資金に余裕があるのならばKDDIも保有しておきたい銘柄です。
まとめ
今回は日本を代表する商社、銀行、通信業界のそれぞれ1位、2位の銘柄を比較検証しました。
日本を代表する業種の中でも代表的な銘柄ですので、業績や配当推移は順調に推移しており、優劣をつけるのが難しくもありました。
本来であれば2銘柄とも保有する事が理想的だとは思いますが、資金やNISA枠、そして株価上昇など株式投資には様々な縛りもありますので、まずはどちらか1銘柄だけでも購入しておきたいところです。
3大業種のおすすめ銘柄検証はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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