今回は保有銘柄の中から4月28日に発表されたJTの第1四半期決算とスカパーJSATの本決算内容を検証していきます。
JTはウクライナやロシアに工場がある事で第1四半期は2月末に勃発したロシアのウクライナ侵攻の影響を大きく受けましたので状況を確認していきます。
スカパーJSATは、宇宙事業において「未知を価値」にという壮大なテーマを掲げていますので本決算の内容や今後の展望を検証していきます。
JTの現状
まずJTの現状を簡単にまとめていきます。
JTのメイン事業は時代に逆行するたばこ事業の為、近年の業績は低迷し減配の恐れも嫌気され始めた2017年以降は株価も下落傾向で、ついに2021年2月発表の本決算で大規模なリストラと共に上場後初の減配を発表しました。
前期の業績については海外たばこ事業の好調に加え円安のプラス要因もあり回復傾向で、今年2月に発表された本決算も順調な内容でした。
しかし、現状は2月末より始まったロシアのウクライナ侵攻の影響を大きく受けており、今後の状況は不透明です。
JT第1四半期決算内容
JTの第1四半期時点の最終利益は1241億円と前年同期比で104億円の増益です。
通期最終利益予測は3560億円、年間配当は150円で従来予想に変更ありません。
業績好調の要因は新興国でのたばこ販売が伸びた事に加え円安の影響もあったとの事です。
ロシアウクライナ情勢の影響
そして今回の決算で1番注目された点はロシアウクライナ情勢の影響だと思います。
JTは現在ロシア市場において全ての新規の投資及びマーケティング活動等を停止しており、また今後については、当社グループ経営からの分離を含めた選択肢の検討を行っているところと発表しています。
ロシア市場が業績に与える影響は売上収益で約8%、営業利益で約15%としていますが、ロシアウクライナ情勢に伴う不確実性を踏まえ、第1四半期決算時点においては通期業績予想の修正は⾒送り、第2四半期決算以降に必要に応じて修正を行うとしています。
株価推移
今年に入り株価は2300円付近で順調に推移していましたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて3月上旬には2000円丁度まで売られました。
その後は円安が更に進んだ影響もあり急速に値を戻し、また今回の決算を受けて翌日の値動きですが、寄り付きや場中に少し下がる場面もありましたが、終値は前日比プラスで終わっています。
業績推移
JTの2019年からの最終利益推移と2020年からの第1四半期時点の最終利益推移を検証していきます。
第1四半期決算(億円)
銘柄名 | JT | 進捗率(%) |
2020年第1四半期 | 863 | 27.8 |
2021年第1四半期 | 1137 | 33.5 |
2022年第1四半期 | 1241 | 34.8 |
最終利益推移(億円)
銘柄名 | JT |
2019年12月期 | 3481 |
2020年12月期 | 3102 |
2021年12月期 | 3384 |
2022年12月期(会社予想) | 3560 |
2020年に大きく落ち込んだ後は回復傾向です。2022年の予測として売上は前期より減収見込みですが、日本市場におけるたばこ事業運営体制の見直しや円安の影響などで最終利益は増益見込みとなっています。
しかし、先程触れた様にロシアウクライナ情勢次第では今後下方修正の可能性もあります。
配当推移
年 | 配当推移 |
2015年 | 118 |
2016年 | 130 |
2017年 | 140 |
2018年 | 150 |
2019年 | 154 |
2020年 | 154 |
2021年 | 140 |
2022年(会社予想) | 150 |
2015年からの配当推移と配当性向をまとめています。
2019年までは順調に増配傾向でしたが2020年には配当性向が90%付近まで上昇し、2021年には上場後初の減配を発表しています。
2022年は海外たばこ事業の好調で業績も回復基調となっており、配当も減配前の水準に戻る150円予測となっています。
JTの配当方針は、強固な財務基盤を維持しつつ中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指すとし、具体的な数値としては配当性向75%を目安にしています。
株価等指標(2022年5月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
JT | 2914 | 2228 | 11.1 | 1.36 | 150 | 6.73 | 74.77 |
JTの配当利回りは2000円まで株価が売られた時は7%を超えました。
現在はそこから株価を戻していますが、それでも6%後半の水準です。
今期の配当は今後のロシアウクライナ情勢次第な部分はありますが、この水準を維持出来ればかなりの高配当銘柄となります。
JTの投資判断
今までの点を踏まえJTの投資判断ですが、ロシアウクライナ問題以外は順調に推移しています。
今回の第1四半期決算にロシア市場の影響は考慮されていませんでしたが、円安の影響もあり想定以上に良い決算だったと思います。
それだけにロシアのウクライナ侵攻が改めて腹立たしく感じられますが、JTはロシア事業の売却も検討しているとの事でしたので、今後については引き続き状況を見守るしかないところです。
スカパーJSATの現状
続いてはスカパーJSATです。
まずは、スカパーJSATの現状ですが「スカパー!」でお馴染みのメディア事業は、動画配信サービス会社の乱立による視聴料収入減少やコロナ禍による大型イベントの中止などで苦戦が続いていますが、保有する16基の衛星を利用した宇宙事業は好調な状況です。
その宇宙事業では、航空機Wi-FIや船舶などのグローバル市場の旺盛な衛星通信需要へ積極対応する事や宇宙基本計画に沿った事業拡大を目指しています。
本決算内容
スカパーJSATの2022年3月期最終利益は145億円と従来予想から約15億円増で着地していますが、年間配当は従来予想の18円で変更ありませんでした。
今期は最終利益を150億円と約5億円の増益、年間配当は据え置きの18円予測で発表しています。
業績好調の要因は、宇宙事業による増収とメディア事業の費用抑制等としています。
株価推移
株価は2020年12月に500円を超える場面もありましたが、去年後半以降は400円から450円のボックス圏での動きです。
また今回の決算を受けて翌日の株価は30円近く上昇していますので、素直に好業績を評価された感じだと思います。
最終利益推移(億円)
2018年からの最終利益を見ていきますが、ここ数年は順調に増益傾向です。
銘柄名 | スカパーJSAT |
2018年3月期 | 113 |
2019年3月期 | 96 |
2020年3月期 | 120 |
2022年3月期 | 145 |
2023年3月期(会社予想) | 150 |
特に宇宙事業は、グローバル・モバイルなどの収益貢献に加え新領域での順調な案件獲得などもあり好調な状況が続いています。
実際2022年の最終利益の8割近くは宇宙事業で占めており、比率の面でもメディア事業とは大きな差がついています。
配当推移
銘柄名 | スカパーJSAT |
2015年 | 12 |
2016年 | 14 |
2017年 | 18 |
2018年 | 18 |
2019年 | 18 |
2020年 | 18 |
2021年 | 18 |
2022年 | 18 |
2023年(会社予想) | 18 |
配当は2017年より18円で安定しています。
スカパーJSATは配当方針を1株あたり年間16 円以上、配当性向30 %以上の条件を満たす額としています。
そろそろ増配も期待したいところですが今期の配当性向は現状35%付近ですので、今後余程の事が無い限り今期の増配は厳しいかもしれません。
株価等指標(2022年5月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
スカパーJSAT | 9412 | 453 | 8.77 | 0.54 | 18 | 3.97 | 34.8 |
株価は今回の決算を受けて400円台半ばまで上昇した事で、配当利回りは4%付近の水準となっています。
業績も宇宙事業を中心に安定していますので、PERは8倍台、PBRは0.5倍付近と市場平均と比較して割安な水準です。
スカパーJSATの今後
スカパーJSATは2030年に向けて宇宙事業・メディア事業双方の技術・サービスの開発を進め、Society5.0(超スマート社会)の実現に貢献し、250億円を超える当期純利益を目指すとしています。
society5.0とは、AI(人工知能)やロボットの働きによってあらゆる人が快適に暮らせる社会を目指し、2016年1月に日本政府で閣議決定された「第5期科学技術基本計画」に基づく未来社会構想の事です。
また新たな宇宙事業を担う新会社を今年7月にNTTと共同で設立予定としており、宇宙空間の新たなICTインフラ基盤 「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」事業の企画・開発・サービス提供を担う事を目的としています。
スカパーJSATは進化の歴史は未知との遭遇の歴史としており、まだ1%も探れていない宇宙空間に広がる「未知を価値」に変えるべく、人工衛星たちと共に世界が驚くビジネスを目指すとしています。
少年漫画の様な壮大なテーマですが、どこか将来を期待したくなるところがあります。
スカパーJSATの投資判断
今までの点を踏まえスカパーJSATの投資判断ですが、業績は宇宙事業を中心に好調で配当も安定傾向ですので高配当株として面白い銘柄だと思います。
宇宙事業についてはすぐに結果が出るものでは無いかと思いますが、その辺りも長期投資となる高配当株銘柄としては最適だと思います。
個人的にもスカパーJSATは4月に200株購入しましたが、今後もタイミングを見て買い増していきたいと考えています。
JTとスカパーJSATの決算検証はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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