最近の日本企業は数年前と比較して株主還元力が向上している様に感じますし、実際最近の決算でも大幅増配や自社株買いなどによって株主還元力を高めている企業が複数あります。
とういう事で前回は数年前と比較して配当が2倍以上になっている「優良株」を3銘柄検証しましたが、今回は数年前と比較して配当が2倍以上に急激に伸びている2銘柄を選出し高配当株として投資可能か個別に検証していきます。
【5401】日本製鉄
最初の銘柄は日本製鉄です。
日本製鉄は日本最大手の鉄鋼メーカーで、元々は新日本製鉄と住友金属工業が2012年に合併して新日鉄住金となり、2019年に日本製鉄へ社名変更しています。
ここ数年は、世界経済の減速や国内の鋼材需要減少に加え中国メーカーの台頭もあり業績は厳しい状況が続いており、複数の生産拠点の休止、閉鎖を決めるなど大規模なリストラを進めているところです。
しかし、直近の業績はコロナからの経済回復や鋼材価格の上昇により急回復しています。
直近決算
日本製鉄は8月4日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は2309億円と前年同期比で688億円の増益となっています。
通期最終利益は在庫評価影響などを除き実力ベースで6000億円以上を目指すとしており、年間配当予測は非開示となっていますが、中間配当は前期と同額の70円を予定としています。
業績好調の要因は、日本では実需が底堅く推移している事に加え商品市況上昇の為との事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 日本製鉄 |
2019年3月期 | 2511 |
2020年3月期 | -4315 |
2021年3月期 | -324 |
2022年3月期 | 6373 |
2023年3月期 | 6000 |
2019年からの最終利益をまとめていますが、かなり増減が激しいです。
高齢化、人口減少による建設需要の縮小などで国内の鋼材需要は減少が続いていましたが、2020年はコロナショックで更に大きく業績を落としました。
前期はコロナからの経済回復や鋼材価格の上昇でV字回復となっており、今期は経済環境の不透明さから現状減益見込みとしていますが、第1四半期時点の最終利益は通期進捗率の約38%と引き続き好調な状態は続いています。
配当推移
年 | 配当推移 |
2015年 | 55 |
2016年 | 45 |
2017年 | 45 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 10 |
2021年 | 10 |
2022年 | 160 |
2023年 | ‐ |
配当も浮き沈みの激しい業績と共に増減が激しくなっており、数年前までは50円前後の水準でしたが、コロナショックで業績が落ち込んだ2020年、2021年は年間配当が10円まで落ち込んでいます。
しかし、2022年は業績の急回復により年間配当も前期比で16倍の水準まで急上昇しています。
日本製鉄の配当方針は業績に応じた利益の配分を基本としており、具体的な数値としては連結配当性向年間 30%程度を目安としています。
株価推移
株価はコロナショックで798円まで下がりましたが、その後は2000円を超える水準まで値を戻しています。去年5月以降は、1700円前後から2400円付近での動きになっており、直近は2200円前後で推移しています。
株価指標(2022年9月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
日本製鉄 | 5401 | 2190 | 3.4 | 0.54 | ‐ | ‐ | ‐ |
今期の年間配当予測は開示されていませんが、前期の年間配当160円で計算すると配当利回りは7%台と高水準です。
好調な業績を背景にPER、PBRは市場平均と比較して割安で、前期配当で計算すると配当性向は25%付近と余裕を感じます。
投資判断
今までの点を踏まえ日本製鉄の投資判断ですが、日本を代表する鉄鋼メーカーで配当利回りも前期並みで想定すると7%付近と高水準です。
そして最近の業績が急回復している要因は商品市況の上昇ですが、同様の理由で業績が急回復している総合商社などと比較しても株価はそこまで上昇していません。
今期配当見込みは開示されていませんが業績は前期以上のペースで推移しており、指標面で見ても今の株価はチャンスの様にも思えます。
しかし、配当方針は業績に応じた利益配分としており、今後商品市況が下落し業績が落ち込んだ時の配当は心配なところです。
今後の商品市況がどうなるのかは誰にも分かりませんが、数年前の業績が落ち込んだ時の配当推移をみると中長期保有の高配当株としては狙いにくいところがあります。
【3465】ケイアイスター不動産
2つ目の銘柄はケイアイスター不動産です。
ケイアイスター不動産は埼玉県が本社の不動産会社で、戸建分譲事業、注文住宅事業、総合不動産流通事業などを手掛けています。
日本の戸建住宅サプライチェーンを革新する「リアル×テクノロジー」の供給モデルによって、土地の仕入れから販売、アフターサポートまでの一気通貫のテクノロジープラットフォームの構築や多棟中心の従来事業者が参入しにくい小ロット区画にデザイン性の高いコンパクト分譲住宅を展開するなどで業績を急速に伸ばしています。
直近決算
ケイアイスター不動産は8月12日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は約32億円とほぼ前年並みの数値となっており、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
最終利益は前年並みでしたが、売上は前年同期比で約16%の増収と四半期ベースでは過去最高を更新しており、昨年度のコロナ特需は収束し、通常の成長ペースに回帰しているとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ケイアイ不動産 |
2019年3月期 | 34 |
2020年3月期 | 35 |
2021年3月期 | 76 |
2022年3月期 | 147 |
2023年3月期(会社予想) | 160 |
2019年からの最終利益を見ていきますが、順調に増益が続くなか特に2021年より急激に伸びています。しかし、前期の最終利益は2倍近く伸びていますが、売上だけをみると2割程度しか伸びていません。
この点については、今まで先行投資として費用をかけていたDX化の推進が実を結びだした為としています。
配当推移
銘柄名 | ケイアイ不動産 |
2015年 | 15 |
2016年 | 35 |
2017年 | 64 |
2018年 | 71 |
2019年 | 84 |
2020年 | 76 |
2021年 | 139 |
2022年 | 265 |
2023年(会社予想) | 280 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、概ね順調に増配傾向です。
特に2021年以降は好調な業績と連動して増配額も大きくなっており、今期の年間配当予測280円は、2015年の15円と比較すると約19倍、2020年の配当76円でも約3.7倍とここ数年で配当は急激に増えています。
株価推移
株価はコロナショック時に968円まで売られた後は急速に上昇し、2021年11月には9370円まで上昇しました。
しかし、そこからは右肩下がりの状況が続いており、直近の株価は4900円前後で推移しています。
株価指標(2022年9月2日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ケイアイスター不動産 | 3465 | 4890 | 4.8 | 1.73 | 280 | 5.73 | 27.7 |
配当は大幅増配が続いていますが最近の株価は低迷していますので、配当利回りは5%半ばと高水準です。
業績好調を背景にPERは市場平均と比較して割安で配当性向は28%付近と余裕を感じます。
投資判断
今までの内容からケイアイスター不動産の投資判断ですが、ここ数年の最終利益は急激に伸びており、好調な業績と連動して配当も大幅増配となっていますので、5%台の配当利回りは高配当銘柄として気になる水準です。
しかし、株価はここ10ヶ月で9000円を超える水準から5000円付近まで売られており、値動きの荒さは気になる部分です。
10ヶ月前と比較すると今の株価は割安に見えますが、1年前の株価は5000円台だった事を考えるとそこまで割安には感じなくなります。
今の株価でも指標面では割安に見えますが、現在は業績が急激に伸びているだけに今後業績の反動や少しの停滞でも株価は更に売られる懸念はあります。
以上の点を踏まえケイアイスター不動産については、今後株価が多少下がっても動じない覚悟ができる人は狙ってみても面白い銘柄かなというところです。。
まとめ
今回は数年前と比較して配当が急激に伸びている高配当株を2銘柄個別に検証しました。
日本製鉄は2021年と比較して16倍、ケイアイスター不動産は2015年と比較すると約19倍と2銘柄とも数年で急激に配当額が増えています。
しかし、中長期の高配当銘柄に求められるものは、やはり安定です。
急激に配当が伸びている銘柄は急激に配当が減っていくリスクもありますので、その点を考慮しながら銘柄を選定していく事が大切かと思います。
配当が数年前と比較して2倍以上急激に増配している2銘柄については、YouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
40代元証券マンの高配当株投資(YouTube編)
コメント