最近は3月期銘柄の第2四半期決算を中心に決算発表が本格化していますが、7月から9月の決算になりますので、更に進んでいる円安や原材料費高騰の影響を受けて通期予測の上方修正や下方修正を発表する銘柄も目立ちます。
そこで今回は先週までに発表された決算のうち、保有銘柄を中心に気になった9銘柄の決算内容を決算が発表された順番に検証していきたいと思います。
また、今回は9銘柄と数も多いので決算の内容をメインにその他の部分については簡単にまとめていますので是非最後までご覧ください。
【2914】JT
まずは保有銘柄の先頭を切って10月31日に決算が発表されたJTです。
JTのメイン事業は時代に逆行するたばこ事業ですので近年の業績は低迷し、株価も下落が続いていましたが、2021年頃より海外たばこ事業の好調に加え円安のプラス要因もあり回復傾向が続いていました。
今期も引き続き海外市場を中心に第2四半期までの業績は順調に推移していましたが、ロシアやウクライナに工場がある事でロシアウクライナ情勢の影響を大きく受けている点が懸念材料となっていました。
直近決算
JTは12月決算の為、10月31日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は4038億円と前年同期比で650億円の増益です。
業績好調に伴い通期最終利益予測を4450億円へ830億円上方修正しており、年間配当は188円へ従来予想から38円の増額が発表されています。
業績好調の要因は、引き続きたばこ事業の力強いプライシング効果(価格設定)が牽引した事に加え円安の影響も寄与したとの事です。
燃焼性たばこの販売本数自体は前期比マイナスでしたので、やはり値上げと何より円安の追い風が大きかった模様です。
直近決算の感想
決算の感想ですが、第2四半期までの好調な状況が維持されており、通期最終利益、年間配当ともに大きく上方修正されています。
業績好調の大きな要因である円安は継続中ですので今期は順調な着地が想定されますが、為替の影響でここまで好調な状況が続くと円安トレンドが終了したタイミングが少し怖いかなという印象です。
そして、今回の配当増額は目安としている配当性向75%にあわせた金額になっていますので、今後円高に振れるなどで減益となった時の減配リスクは覚悟しておく必要がありそうです。
【8031】三井物産
続いては総合商社の先頭を切って11月1日に決算を発表した三井物産です。
三井物産は三菱商事や伊藤忠商事と並ぶ大手総合商社で従来資源部門に強みを持っていますが、現在非資源部門への収益構造改革も進めているところです。
直近の業績はコロナからの経済回復や商品市況上昇の影響で急回復していますが、ロシアのウクライナ侵攻に絡むロシア極東の石油・ガス開発プロジェクト「サハリン2」の動向などが懸念されています。
直近決算
三井物産は11月1日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は5391億円と前年同期比で1345億円の増益となっています。
業績好調により通期最終利益の予測を9800億円へ1800億円上方修正し、年間配当予測は従来予想から10円増の年間130円へ増額しています。
第2四半期大幅増益の要因については、石炭や原油、ガスなどの資源価格が高止まりしている事に加え円安の影響としています。
直近決算の感想
総合商社では伊藤忠が第2四半期決算前の10月4日に通期最終利益と年間配当を上方修正していましたので、三井物産にも上方修正の期待がありましたが、結果は期待通りの内容でした。
三井物産は元々今期の予測について資源価格の下落を想定し減益見込みとしていましたが、資源価格の上昇も円安もまだ継続していますので、総合商社の時代もまだまだ続きそうです。
【9433】KDDI
11月2日は通信会社の先陣を切って、KDDIが第2四半期決算を発表しています。
KDDIはNTT、ソフトバンクと並ぶ大手通信会社で、通信業界は2020年に菅総理による通信料金値下げ圧力を受けた為、KDDIも通信料金の値下げプランを発表しましたが、現状は通信料金の落ち込みをその他の成長領域部門でカバーしている状況です。
そして、KDDIは7月2日に大規模な通信障害を引き起こし、加入者への賠償額として総額約75億円を支払いに充てると発表した事も話題にもなりました。
直近決算
KDDIは11月2日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は3543億円と前年同期比で71億円の減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因としては、通信障害への対応や燃料費高騰が影響した為としています。
通信料金値下げの影響をDXや金融、エネルギー事業などの注力領域でカバーする展開が続いており、また今後仮想化技術を中心に中期で500億規模の追加投資により品質を向上させると表明しています。
直近決算の感想
決算の感想ですがKDDIの場合、上期はどうしても通信障害のイメージが残っていますので影響が懸念されていました。
その様な意味ではJTや総合商社の決算と比較すると物足りない数字に見えますが、今回の減益は仕方がない印象です。
通信株は、ディフェンシブ株として景気後退局面でも安定的に増益していく事が望まれますので、今後に期待したいところです。
11月4日(金)
続いて11月4日は金曜日という事で決算発表も多く、保有銘柄からは伊藤忠、ソフトバンク、ヤマダHDの決算をみていきます。
【8001】伊藤忠
11月4日最初の銘柄は三井物産に続いて総合商社の伊藤忠です。
伊藤忠は従来から非資源部門(情報、金融やファミリーマート)に強みを持っていますが、ここ数年の業績は商品市況上昇の影響も加わり好調な状況が続いています。
伊藤忠は第2四半期決算の1ヵ月前に通期最終利益や年間配当予測を上方修正していましたので引き続き順調な内容が想定されていました。
直近決算
伊藤忠は11月4日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は4830億円と前年同期比で176億円の減益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、携帯事業や投資ファンドが不調だった事に加え、前年に台湾のファミリーマート株を売却した反動などとしています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、先程お伝えした様に伊藤忠は1ヵ月前に業績を上方修正していた為、想定通りの好調な内容でした。
前期比では減益でしたが過去最高だった前期に次ぐ水準となっており、1ヵ月前に上方修正した通期予測に対しても進捗率は約60%となっています。
特に資源部門だけでなく非資源部門も順調に推移していますので、今後商品市況が下落するタイミングでも期待できそうな展開となっています。
【9434】ソフトバンク
続いてはKDDIに続いて通信会社よりソフトバンクです。
ソフトバンクもKDDI同様通信料収入については、値下げによる収益減のほか国内市場は飽和状態である為、通信部門以外の分野での収益確立を目指すようになっています。
そしてソフトバンクは、ヤフーやLINEに加えPayPayを中心に決済事業も手掛けており、第3四半期からは金融事業セグメントを新設すると表明しています。
直近決算
ソフトバンクは11月4日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2371億円と前年同期比701億円の減益となっています。
第2四半期決算は前期比で20%以上の減益ですが、通期最終利益を5400億円へ100億円上方修正しており、年間配当は86円で変更ありません。
第2四半期決算が減益の要因は、全てのセグメントで売上は増収となっていますが、通信料金値下げの影響や人材獲得強化によるコスト増、販促費増加の為としています。
直近決算の感想
決算の感想について、第2四半期は大幅減益でしたが通期見込みは上方修正と不思議な決算になりました。
第2四半期減益の要因は先程お伝えした通りですが、通期見込みを上方修正した要因は、10月1日に連結子会社化したPayPayについての再測定益が想定を上回った為としています。
通信料金値下げの影響は今期を底に大幅縮小予定見込みとしていますので、来期以降LINEやヤフー、そしてPayPay事業を中心に更に業績を伸ばしていけるのか注目です。
【9831】ヤマダHD
11月4日最後の銘柄は家電量販店のヤマダHDです。
ヤマダHDは現在家電だけではなく住空間をコーディネートして提案できる事業内容に変革を進めており、住宅や家具・インテリア、リフォーム、不動産、保険・金融などをWEBでも店舗でも「暮らしまるごと」提案できるサービスを開始しています。
しかし直近の業績は低迷しており、第2四半期発表予定日の1週間前に通期業績の下方修正を発表するなど不安な状況での決算発表となりました。
直近決算
ヤマダHDは11月4日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は176億円と前年同期比で123億円の減益となっています。
そして通期見込みについては先程お伝えした通り10月28日に下方修正が発表されており、通期最終利益は従来予想から83億円減の436億円となっており、年間配当は非開示のままです。
また、5月の本決算で発表していた1000億円を上限とする自社株買いについては、計画通りに上限の50%を取得済みと発表しています。
直近決算の感想
決算の感想ですが不安視されていた通りの大幅減益となっています。
減益の要因は、前年度より継続している一過性巣ごもり需要の反動減や大型台風の影響に伴う店舗休業に加え、エネルギー価格上昇による水道光熱費増加などの影響としています。
減要因が下期以降改善されるかは不透明な状況となっており、第2四半期時点の通期進捗率は下方修正した金額でも約40%と今後が不安な内容となっています。
11月7日(月)
11月7日も決算発表銘柄は多かったですが、保有銘柄からは個人投資家の人気も高いオリックスと稲畑産業の決算をみていきます。
【8591】オリックス
まずはリース業界最大手のオリックスです。
オリックスは現在リース業にとどまらず、不動産、金融、事業投資など様々な事業で海外を含む多くの企業と取引しています。
しかし、オリックスは今期の見込みについて年間配当以外を公表していませんでしたので、通期業績見込みが公表されるかも第2四半期決算の注目点でした。
また、今年5月の本決算発表時に個人投資家から人気を集めていたカタログギフト方式の株主優待を2024年3月末で廃止すると発表した事でも話題になりました。
直近決算
オリックスは11月7日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1217億円と前年同期比で249億円の減益となっています。
そして非開示としていた通期最終利益は2500億円と前期から621億円の減益で発表していますが、年間配当は85.6円と従来予想から変更ありません。
前期比減益の要因は、輸送機器やアジア・豪州市場は増益でしたが、保険や米国、欧州市場が減益だった事に加え、前期にあった米国での事業売却の反動としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、オリックスの今期業績は第2四半期まで通期の業績見込みが開示されなかった点や前期は弥生の売却益1632億円があった反動を考慮すると苦戦が想定されていました。
実際今期の業績は大幅減益見込みとなり、決算翌日の株価は大きく下げましたが、ここ2年くらいオリックスの株価は堅調でしたので良い調整局面になりそうな気もします。
配当についても配当性向33%または前期配当金額(85.6円)の高い方を年間配当にすると下限を定めていますので、今期は厳しい状況が続くかもしれませんが、押し目があれば狙いたい銘柄です。
【8098】稲畑産業
続いては化学系専門商社の稲畑産業です。
稲畑産業は情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の4つの事業を世界17カ国、約60拠点で展開しており、売上比率も50%以上が海外と国際的な企業です。
ここ数年はコロナ感染拡大の影響もあり業績は横ばいが続いていましたが、最近は樹脂価格上昇に加え保有株式の売却益も加わり業績は急激に伸びています。
しかし、第1四半期の最終利益は前期比で40%を超える大幅減益で、要因は前期にあった保有株式売却益の反動との事でした。
減益の要因は事前から想定されていたものでしたが、稲畑産業の決算は場中に発表された事もあり株価は急落しましたので、今回も決算後の株価がどう動くかを含め注目でした。
直近決算
稲畑産業は11月7日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は96億円と前年同期比で39億円の減益でしたが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
前期比減益の要因は、円安の効果もあり売上は増収でしたが、フラットパネルディスプレイ関連商材の販売低迷を要因に情報電子事業が落ち込んだ事が主な要因との事です。
直近決算の感想
決算の感想ですが、第1四半期に続き場中の大幅減益発表となり株価は大きく下げましたが、翌日には戻すというこちらも前回と同じパターンでした。
海外の売上比率が高い事で円安の恩恵も期待したいところですが、今のところは情報電子事業の落ち込みが響いている様です。
しかし第2四半期では前期比で20%を超える大幅減益でしたが、通期進捗率は約47%ですので、想定内の落ち込みかとは思います。
【5020】ENEOS
最後は11月10日に決算を発表した石油元売りの最大手ENEOSです。
石油元売り銘柄の業績は、その時の原油価格によって以前仕入れて現在在庫で持っている石油の価格も増減し、販売するガソリンなどの石油製品の利益も変わってくる為、原油価格に大きく左右されます。
実際ENEOSは今期の通期最終利益を大幅減益見込みとしていましたが、高止まりする原油価格を受けて第1四半期で既に通期見込みを上回る内容でしたので、第2四半期決算で業績の上方修正はあるのかが注目でした。
直近決算
ENEOSは11月10日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2487億円と前年同期比で374億円の増益です。
業績好調に伴い通期最終利益予測を3300億円へ1700億円上方修正していますが、年間配当は従来予想通り年間22円で変更ありません。
前期比増益の要因として、エネルギー事業は油価上昇に伴う燃料コストの増加やナフサ・石油化学品の市況悪化、電気調達コストの増加などにより大幅減益でしたが、在庫で持っている原油の価格上昇や円安の影響で全体としては増益としています。
直近決算の感想
決算の感想ですが、通期最終利益は上方修正されましたが年間配当は据え置きという1番予想通りの決算だったかと思います。
しかし、通期業績が上方修正された要因は在庫影響によるもので、在庫影響を除いた営業利益は第2四半期時点で減益となっていましたので、配当据え置きは仕方がない部分かと思います。
上方修正後の通期進捗率は約75%と依然高水準ですが、エネルギー事業の減益などは今後に少し不安を感じる内容でした。
まとめ
今回は保有銘柄を中心に直近の決算で気になった銘柄を9銘柄検証しました。
冒頭でも触れた様に7月から9月の決算だった為、更に進んだ円安や原材料費の高騰が大きく業績に影響していましたが、明暗は分かれている状況でした。
円安や商品市況の上昇をプラスにしていたJTや総合商社は絶好調でしたが、ヤマダHDやオリックスは微妙な内容でした。
今後の為替相場や商品市況がどの様に動くかは分かりませんが、少なくともこれから数ヶ月は大きく流れが変わりそうな雰囲気はありませんので、今期はこのままの流れでいきそうです。
という事で決算を受けて株価がどの様に動いたかなどの詳細は、もう少し様子をみて11月26日土曜日に投稿予定の月末の保有銘柄を検証する動画でまとめたいと考えていますので宜しくお願いします。
最近の決算が気になった高配当株9選は、YouTubeで動画版をまとめていますのであわせてご覧ください。
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