今回はPBRが市場平均と比較してかなり低い3銘柄が高配当株として投資可能か検証していきます。
現在の株価が割安かをみる指標としてはPERやPBRが代表的で、実際私の普段の検証記事でも各銘柄のPBRを記載していますが、PBRの内容について詳しく触れた事はありませんでしたので、今回はPBRとは何なのかを含めまとめていきたいと思います。
PBRとは
PBRとは株価純資産倍率の事で、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標です。
企業の資産総額から負債総額を差し引いた純資産をその企業の解散価値と呼び、PBRが1倍という事は現在の株価とその銘柄の解散価値が同じ水準といえます。
その為、PBRの目安は1倍を下回ると割安で1倍を上回ると割高と判断される事が多いです。
それでは以上の点を踏まえ、現在のPBRがかなり低い高配当株を3銘柄検証していきます。
【5410】合同製鐵
最初の銘柄は合同製鐵です。
合同製鐵は日本製鉄グループの鉄鋼メーカーで本社は大阪です。
国産資源である鉄スクラップを少ないエネルギーで再び社会資本の形成に役立てるなど、インフラを支える鉄鋼製品の提供を通じて社会に貢献しています。
そして、直近の業績は鋼材価格上昇により急回復していますので、現状や将来性を含め検証していきます。
直近決算
合同製鐵は11月2日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は34億円と前年同期の赤字から大幅増益となっています。
業績好調に伴い通期最終利益を65億円へ10億円上方修正し、配当は年間120円へ従来予想から10円増額しています。
業績好調の要因は、継続している鉄スクラップ価格の高騰が調整局面に入ったことで、取り組んできた販売価格改善が追い付いたことに加え、コストダウンの成果が得られた為としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 合同製鐵 |
2019年3月期 | 37 |
2020年3月期 | 74 |
2021年3月期 | 49 |
2022年3月期 | -11 |
2023年3月期(会社予想) | 65 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが増減の激しい展開となっており、特に前期は赤字に転落しています。
前期赤字に転落した要因は、主原料である鉄スクラップなどの高騰に販売価格の値上げが追い付かなかった為との事です。
今期については、原燃料の高騰に対し取り組んできた販売価格改善とコストダウン効果を 一定規模見込める見通しが立ったとして、第1四半期決算で通期最終利益を大幅増益見込みで発表し、先程お伝えした様に第2四半期決算で更なる増益を発表しています。
配当推移
銘柄名 | 合同製鐵 |
2015年 | 40 |
2016年 | 85 |
2017年 | 40 |
2018年 | 80 |
2019年 | 70 |
2020年 | 145 |
2021年 | 95 |
2022年 | 0 |
2023年(会社予想) | 120 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、増減の激しい業績と連動して配当も大きく上下しています。
合同製鐵の配当方針は業績に応じた利益配分を基本として、財務体質の改善、必要な再投資資金の確保などを勘案しつつ、業績連動利益配分の指標を年間30%程度目安としています。
株価推移
株価は2020年2月に3035円の高値を付けた後は、コロナショックもあり右肩下がりの状況が続きました。
しかし、今年5月に1197円まで下げた後は反発に転じ、直近は2000円付近まで上昇しています。
株価指標(2022年12月16日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
合同製鐵 | 5410 | 2026 | 4.6 | 0.29 | 120 | 5.92 | 27.0 |
最近の株価は安値から反発していますが、大幅増配を受けて配当利回りは6%前後と高水準です。業績好調の為PERは市場平均と比較して割安で、配当性向は27%付近と方針通りの水準です。
そして今回のテーマであるPBRは0.3倍付近と目安の1倍を大きく下回っています。
投資判断
今までの内容から合同製鐵の投資判断ですが、現在の配当利回りは6%前後と高水準で指標面もかなり割安です。
しかし、要因は鉄スクラップを中心とした主原料の価格高騰ですので、現在の水準を今後も維持できるかは不透明です。
そして合同製鐵は過去の配当推移をみても分かる様に、業績が悪化すると無配にまで転落する可能性もありますので、PBRはかなり割安ですが中長期の高配当株としては狙いにくいです。
【7212】エフテック
2番目の銘柄はエフテックで、ホンダ系の自動車部品メーカーです。
エフテックは、半世紀以上に渡り自動車の進化に応じて高機能足廻り製品を世界の自動車メーカーに供給しており、足廻り機能領域の専門メーカーとして世界No.1を目指すとしています。
また、北米において新規受注案件の獲得に繋げるとともに、将来性豊かなインド市場においても新たに子会社を取得するなど海外展開も積極的に進めています。
直近決算
エフテックは11月4日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は約6億円と前年同期の赤字から大幅増益となっています。
業績好調を背景に通期最終利益を15億円へ5億円上方修正していますが、年間配当は従来通り年間20円で変更ありません。
業績好調の要因は原材料価格高騰などの影響は受けましたが、商品の売上増加や新規得意先の量産が本格化した事に加え、円安の追い風もあったとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | エフテック |
2019年3月期 | 28 |
2020年3月期 | 3 |
2021年3月期 | -11 |
2022年3月期 | 2 |
2023年3月期(会社予想) | 15 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、増減の激しい展開が続いています。
2021年はコロナショックや半導体不足の影響で赤字に転落しており、前期は引き続き半導体不足などサプライチェーン混乱の影響を受けつつも、コロナからの経済回復もあり黒字に回復しています。
今期も各種部材の需給逼迫や上海ロックダウンの影響などにより主要得意先の減産は継続すると見込んでいますが、自動車需要は旺盛であり徐々に生産は正常化に向かうものと想定される事や円安が進んでいる事で大幅増益見込みとしています。
配当推移
銘柄名 | エフテック |
2015年 | 20 |
2016年 | 20 |
2017年 | 27 |
2018年 | 20 |
2019年 | 20 |
2020年 | 20 |
2021年 | 8 |
2022年 | 10 |
2023年(会社予想) | 20 |
2015年からの配当推移をみていきますが、数年前までは年間20円付近で安定していました。しかし、コロナショックで赤字に転落したタイミングで減配しており、今期は業績の回復により以前の水準へ戻る見込みになっています。
エフテックの配当方針は業績に基づく利益還元を基本とし、財務体質の強化を図りながら利益の状況、将来の事業展開など長期的な視野に立ち、また節目に応じて記念配当、株式分割などを検討するとしており、配当性向の当面の目途は10%以上としています。
株価推移
株価はコロナショックで365円まで下げた後は順調に値を戻し、2021年7月には973円まで上昇しました。
その後は反落し、今年に入ってからは500円を挟んで動きが止まっている状況です。
株価指標(2022年12月16日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
エフテック | 7212 | 523 | 6.5 | 0.19 | 20 | 3.82 | 24.7 |
最近の株価は動きが止まっていますが配当が以前の水準へ戻っている事もあり、配当利回りは4%前後の水準です。
今期業績は好調ですのでPERは市場平均と比較して割安で、配当性向は25%付近と余裕を感じる水準です。
そして、PBRは0.2倍付近と先程の合同製鐵よりも更に低い数値となっています。
投資判断
今までの内容からエフテックの投資判断について直近の配当は増減が激しいですが、数年前までは20円前後で安定しており配当利回りも4%付近と高水準です。
今期業績好調の要因である円安について今後の見通しは不透明ですが、電気自動車や自動運転など大きく変革している自動車業界の将来性には期待できる部分も大きいかと思います。
エフテックもこの大変革期のなか、世界中の自動車メーカーへ新たな価値を提供していくとしていますので、将来性も期待して購入する事はアリの様な気もします。
【8306】三菱UFJFG
最後の銘柄は三菱UFJFGです。
三菱UFJFGについては今までの2銘柄ほどPBRは低くないですが、私が現在保有している銘柄の中ではかなり低い方でしたので今回検証銘柄にしています。
三菱UFHFGはメガバンクの三菱UFJや三菱UFJ証券などを傘下に持つ金融持株会社で、世界最大級の金融グループです。
メガバンクの現状は、コロナ倒産に備えていた貸倒引当金を想定ほど使用しなくて良かった事や金利上昇により業績は順調に推移していますが、三菱UFJFGは特殊要因により直近の業績は低迷しています。
直近決算
三菱UFJは11月14日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は2310億円と前年同期比5504億円の大幅減益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更ありませんでした。
第2四半期決算が大幅減益の要因は、MUB(米国地銀ユニオンバンク)株式譲渡に伴う会計処理に関連した損失が5638億円発生した為としています。
しかし、この損失はMUB株式譲渡時に特別利益として4481億円が戻ってくるとしており、MUB関連を除くと最終利益は6792億円で通期進捗率は約68%と順調に推移しているとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三菱UFJ |
2018年3月期 | 9896 |
2019年3月期 | 8726 |
2020年3月期 | 5281 |
2021年3月期 | 7770 |
2022年3月期 | 11308 |
2023年3月期(会社予想) | 10000 |
2018年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックで大幅減益となった2020年以外は順調に増益傾向です。
前期は国内外の貸し出し利ざや改善に加え、コロナショックによる倒産に備えていた与信関連費用の戻り入れなどの影響で最終利益は1兆円の大台に乗せており、今期は現状減益見込みですが1兆円の大台はキープする予測になっています。
しかし、今期業績はMUBの株式譲渡に絡む特別損失の影響で第2四半期時点の通期進捗率が約23%と厳しい決算になっています。
しかし、先程触れた様にこの損失の大部分はMUB株式譲渡時に特別利益として戻ってくるとしており、通期最終利益1兆円も不変との事です。
配当推移
銘柄名 | 三菱UFJ |
2015年 | 18 |
2016年 | 18 |
2017年 | 18 |
2018年 | 19 |
2019年 | 22 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25 |
2022年 | 28 |
2023年(会社予想) | 32 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、2018年頃からは順調に増配傾向です。
コロナショックで業績が落ち込んだ2021年の配当は据え置きでしたが、ここ数年は増配額に勢いが出ています。
三菱UFJの配当方針は、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的・持続的な増加を基本方針とし、2023年度までに配当性向40%への累進的な引き上げを目指すとしています。
株価推移
株価はコロナショックで380円まで売られた後は順調に値を戻しています。去年春以降は600円前後の水準で停滞する時期もありましたが、今年に入ってからはアメリカの長期金利上昇や業績好調を背景に株価は828円まで買われ、直近は高値からは少し売られましたが700円台で推移しています。
株価指標(2022年12月16日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱UFJFG | 8306 | 761.2 | 9.3 | 0.55 | 32 | 4.20 | 39.0 |
株価はここ数年の高値圏で推移していますが、配当も順調に増配が続いていますので配当利回りは4%台前半の水準です。
PERは市場平均より割安で、配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
そしてPBRは0.5倍付近と今までの2銘柄と比較すると高いですが、十分割安な数値です。
投資判断
以上の内容をもとに三菱UFJFGの投資判断ですが、第2四半期時点の業績はMUB関連で厳しい状況が続いていますが、内容は途中で触れた様に特別損失によるもので、今期中にはカバーできる模様です。
そして本業は引き続き好調で最低購入金額も10万円以下と購入しやすいので、日本を代表する金融グループとして購入を検討したい銘柄です。
まとめ
今回は現在のPBRが、かなり低い高配当株を3銘柄検証しました。
冒頭で触れた様にPBRは現在の株価が割安かを示す代表的な指標の1つですが、割安な時期が限定的だったりする場合や業種によって平均値も異なりますので、PBRの数値だけで購入を判断する事は危険です。
しかし、PBRの数値はネットで簡単に確認する事ができますので、業績や配当、株価の動向を確認しつつ、PBRの数値も意識する事がより良い銘柄を探すヒントにはなるはずです。
PBRが低い3銘柄の検証はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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