今回は電力会社の現状と今後の比較検証を行い、電力株が高配当優良株として投資可能かをまとめています。
電力株の現状
私が証券会社で働いていた約20年前は高配当株といえば電力株が主役で、安定した業績、株価、配当と中長期で保有する高配当株投資には欠かせない存在でした。
しかし、東日本大震災での原発事故以降その図式は大きく変化しています。
東京電力は2011年以降配当を行っていませんし、その他の原発を抱える電力会社も無配や減配に陥りました。
また、原発の代替としている発電所も石炭火力を含む火力発電を主力にしている電力会社が多く、世界的な脱炭素の流れに逆行しています。
以上の様にかつての優良高配当株だった電力株の現状は非常に厳しいと考えざるを得ません。
電力各社データ(2021年9月21日時点)
ここからは電力各社のデータをまとめています。
株価や配当利回り
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 予想配当 (2021年) | 配当利回り | 配当性向 |
東京電力 | 9501 | 309 | 7.4 | 0.16 | 0 | 0 | 0 |
中部電力 | 9502 | 1364 | 13.8 | 0.50 | 50 | 3.67 | 50.4 |
関西電力 | 9503 | 1151.5 | 14.7 | 0.61 | 50 | 4.34 | 63.7 |
中国電力 | 9504 | 1068 | 48.1 | 0.59 | 50 | 4.68 | 225 |
北陸電力 | 9505 | 616 | 25.7 | 0.38 | 15 | 2.44 | 62.5 |
東北電力 | 9506 | 861 | 18.7 | 0.52 | 40 | 4.65 | 86.9 |
四国電力 | 9507 | 827 | 13.1 | 0.53 | 30 | 3.63 | 47.4 |
九州電力 | 9508 | 879 | 9.2 | 0.63 | 40 | 4.55 | 42.0 |
北海道電力 | 9509 | 549 | 5.6 | 0.40 | 20 | 3.64 | 20.5 |
沖縄電力 | 9511 | 1499 | 17.4 | 0.52 | 60 | 4.00 | 69.4 |
Jパワー | 9513 | 1668 | 8.98 | 0.36 | 75 | 4.50 | 40.3 |
配当利回りは3%から4%の銘柄も多いですが、配当性向が高めの会社が多い点は注意が必要です。
戦後の電力不足を解消する為に1952年に国によって設立。
各地に発電所を建設して日本の経済成長を支え、2004年に完全民営化を果たす。
Jパワーは全国約100ヶ所の発電所で様々なエネルギー(水力、風力、地熱、再生可能エネルギー、石炭火力)を利用して発電し、作った電力を各地域の電力会社等へ販売しています。
配当推移
銘柄名 | 東京電力 | 中部電力 | 関西電力 | 中国電力 | 北陸電力 | 東北電力 |
2016年 | 0 | 25 | 0 | 50 | 50 | 25 |
2017年 | 0 | 30 | 25 | 50 | 35 | 35 |
2018年 | 0 | 35 | 35 | 50 | 0 | 40 |
2019年 | 0 | 45 | 50 | 50 | 0 | 40 |
2020年 | 0 | 50 | 50 | 50 | 10 | 40 |
2021年 | 0 | 50 | 50 | 50 | 15 | 40 |
2022年(会社予想) | 0 | 50 | 50 | 50 | 15 | 40 |
銘柄名 | 四国電力 | 九州電力 | 北海道電力 | 沖縄電力 | Jパワー |
2016年 | 20 | 5 | 5 | 60 | 70 |
2017年 | 20 | 15 | 5 | 60 | 70 |
2018年 | 30 | 20 | 5 | 60 | 75 |
2019年 | 30 | 30 | 10 | 60 | 75 |
2020年 | 30 | 35 | 10 | 60 | 75 |
2021年 | 30 | 35 | 10 | 60 | 75 |
2022年(会社予想) | 30 | 40 | 20 | 60 | 75 |
ここ数年の配当推移をみると安定している銘柄もありますが、先程説明したように配当性向が高い会社も多い為、現状の配当を維持出来るかは注意が必要です。
電力各社の原発保有状況
電力会社の今後を検証するうえで避けては通れない原発の保有状況についてもまとめています。
沖縄電力以外は原発を保有していますが、現在稼働しているのは関西電力と九州電力が保有している原発のみです。
銘柄 | コード | 原発状況 |
東京電力 | 9501 | 福島原発保有。柏崎刈羽原子力発電所、東通原子力発電所は定期点検中で運転再開未定 |
中部電力 | 9502 | 浜岡原子力発電所運転は運転停止中 |
関西電力 | 9503 | 美浜発電所、大飯発電所、高浜発電所稼働中 |
中国電力 | 9504 | 島根原子力発電所は定期点検中、上関原子力発電所建設中も工事は中断 |
北陸電力 | 9505 | 志賀原子力発電所は定期点検中 |
東北電力 | 9506 | 女川原子力発電所、東通原子力発電所は定期点検中 |
四国電力 | 9507 | 伊方発電所は定期点検中 |
九州電力 | 9508 | 玄海原子力発電所、川内原子力発電所稼働中 |
北海道電力 | 9509 | 泊発電所は定期点検中 |
沖縄電力 | 9511 | 原発保有なし |
Jパワー | 9513 | 建設済みで稼働待ちの大間原発有り |
電力株の今後
電力株の今後についても厳しいものがあります。
原発の問題については、震災から10年が経過した現在でも見通しすら立てられていないのが現実だと思います。
沖縄電力以外の9社は原発を保有しており、原発を稼働させた方が収益の面ではプラスなのですが事故や災害のリスクが常に付きまといます。
しかし廃炉にするにしても廃炉費用や代替発電の問題が出てきます。
かといって現在の中途半端な状況では維持費だけが負担になってしまいます。
以上の様に電力株の今後には原発という大きな問題が控えています。
また、業績についても電力会社は安定しているというのが中長期保有の強みでしたが、電力小売り自由化等の影響もあり最近では大きな業績の変動がある点も注意が必要です。
電力株は買いなのか
最後に電力株は買いなのかですが、正直リスクの方が高い気がします。
少なくとも原発の行方に目途が立たない以上は買いにくい銘柄だと思います。
唯一原発を保有していない沖縄電力ならば購入対象になるかもしれませんが、電力関係で高配当銘柄を購入するのならば、インフラファンドの方が安定して利回りも高く、時代の流れにもあっていると思います。
また、電力会社についてはYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
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