高配当株投資は10年、20年単位の長期投資になるため、投資する銘柄を検討する時には、その企業の将来性まで想像する事が大切です。
しかし、欲を言えば投資する銘柄だけでなく、投資する業界全体に将来性がある方が望ましく、また今後の日本にはAIや再生可能エネルギー、介護に加え防衛関連など将来性が期待できる様々な市場が存在しています。
その中でも、特にガソリン車廃止の流れを受けて電気自動車の普及が進むEV市場は、2035年までに40倍以上に成長すると予測されており、また今後のEV市場では過去とは全く違うイノベーションが世界的に起きると想定されています。
実際、現在各国のメーカーが総力を上げてEV自動車の普及に向けて動き出していますので、今回は今後EV市場の成長に伴い企業自体も成長していきそうな4つの高配当株を検証していきます。
【5851】リョービ
最初の銘柄はリョービです。
リョービは世界的なダイカストメーカーで販路は日米欧の自動車向けが中心です。
ダイカストとは、溶かした金属を金属製の精密な鋳型(イガタ)に高速・高圧で充填し、瞬時に製品を成形します。
軽量で耐久性とリサイクル性に優れている点が特徴で、軽くて丈夫なアルミダイカスト製品は、電気自動車の軽量化による燃費や電費の向上に寄与しているとの事です。
直近決算
リョービは12月決算のため、8月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は43億円と前年同期比25億円の増益となっていますが、リョービは第2四半期決算直前の7月20日に通期業績や年間配当の見通しを上方修正していたため、そこからの変更はありません。
業績好調の要因は、半導体の供給制約緩和に伴い自動車生産の回復が進んだ事やエネルギーコスト上昇分の一部回収が進んだことに加え、為替の円安、電気・ガスの価格激変緩和対策などの影響としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | リョービ |
2019年12月期 | 49 |
2020年12月期 | -6 |
2021年12月期 | -43 |
2022年12月期 | 47 |
2023年12月期(会社予想) | 84 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが変動が大きくなっており、2020年頃はコロナショックや世界的な半導体不足の影響で赤字に転落しています。
しかし、前期はコロナからの経済活動再開や半導体不足の解消に加え、円安が進んだ事で大きく増益となっています。
そして、今期もサプライチェーンの混乱やエネルギー価格、資材価格高騰の懸念はありますが好調な流れは継続するとして、当初は約8億円の増益見込みにしていました。
しかし、先程お伝えした様に7月に業績の上方修正を発表した事で37億円の大幅増益見込みになっていますが、上方修正後でも第2四半期時点の通期進捗率は51%付近と順調に推移しています。
配当推移
銘柄名 | リョービ |
2015年 | 40 |
2016年 | 45 |
2017年 | 50 |
2018年 | 70 |
2019年 | 70 |
2020年 | 0 |
2021年 | 20 |
2022年 | 45 |
2023年(会社予想) | 70 |
2015年からの配当推移について、コロナ前までは順調に増配が続いていましたが、コロナショックで赤字に転落した2020年は無配に転落しています。
その後は業績の回復と連動して大きく増配となっており、今期見込みはコロナ前の水準へ戻る予測になっています。
リョービの配当方針は中長期的に連結業績の向上を図り、成長投資と株主の皆様への安定した利益還元の維持を基本としており、安定的な配当継続に加え、具体的な目安を配当性向30%程度としています。
株価推移
株価は2018年に4830円の高値を付けた後は右肩下がりで、コロナショックでは1005円まで値を下げました。
その後は停滞する時期を挟みながらも反発し、特に今年6月以降は上昇ペースに勢いが付いた事で直近は3000円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
リョービ | 5851 | 3115 | 12.0 | 0.69 | 70 | 2.25 | 27.0 |
今期配当は大きく増配見込みですが、最近の株価は急騰している事で配当利回りは2%前半となっています。
今期業績は増益見込みですがPERに割安感はそれほど無く、配当性向は27%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からリョービの投資判断ですが、最近の業績や配当は自動車生産の回復や円安の影響で大きく伸びています。
そんななか、今後EV化が進んでいく過程でダイカスト製品への需要が高まれば、更なる増益や増配にも期待できるかと思います。
以上の点を踏まえると、現在の配当利回りは2%台と高配当株としては少し物足りませんが、まだコロナ前の水準へ届いていない株価も含め、チェックしておきたい銘柄です。
【6859】エスペック
2番目の銘柄はエスペックで環境試験機の大手メーカーです。
環境試験機とは温度や湿度、圧力、光、振動、電磁波などの特定の条件にさらすことで、製品の耐久テストを行うための機械です。
航空機や食品、医薬品などニーズにあわせて様々な装置を提供するなか、車両部品や車自体をテストする機械も手掛けています。
そして、直近売上の海外比率は5割を占めるほど、国際的な企業です。
直近決算
エスペックは8月9日に第1四半期決算を発表しており、最終利益は5億円と前年同期の赤字から黒字回復していますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績が黒字に回復した要因は、部材確保や生産対応強化によって大幅に増収増益になったためとしており、特に先端技術分野であるIoTやEV関連市場を中心に好調に推移しているとの事です。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | エスペック |
2020年3月期 | 28 |
2021年3月期 | 19 |
2022年3月期 | 19 |
2023年3月期 | 33 |
2024年3月期(会社予想) | 36 |
2020年からの通期最終利益について、2021年頃はコロナショックや半導体、電子部品不足の影響で減益となっていますが、前期は大きく回復しています。
前期業績が大きく増益となった要因は、部品調達難や部材価格高騰は継続しましたが、エレクトロニクスや自動車市場が好調を維持したためとの事です。
そして、今期も経営環境は不透明ですが、IoTや次世代自動車などの先端技術分野を中心に 需要は継続する見込みとして更に増益の予測にしていますが、第1四半期時点の通期進捗率は16%付近と前期比では増益でしたが、少し心配なスタートになっています。
配当推移
銘柄名 | エスペック |
2015年 | 26 |
2016年 | 32 |
2017年 | 36 |
2018年 | 58 |
2019年 | 68 |
2020年 | 68 |
2021年 | 51 |
2022年 | 60 |
2023年(会社予想) | 69 |
2024年(会社予想) | 70 |
2015年からの配当推移について、順調に増配が継続していたなか、コロナショックで業績が低迷した2021年は減配となっています。
しかし、減配はその1回だけで2022年以降は再び増配が続いています。
エスペックの配当方針は、安定配当として年20円の配当金を利益水準に関わらず維持しますが、2期連続で最終赤字の場合は見直しを行うとしています。
そして、具体的な目安は配当性向30%に加え、予定必要資金の超過金額の1/3を目途に配当として上乗せする方針です。
株価推移
株価は2018年に3000円を超える場面もありましたが、コロナショックでは1371円まで値を下げています。
その後は上下を繰り返しながらも上昇し、直近は2500円前後まで値を戻しています。
株価指標(2023年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
エスペック | 6859 | 2378 | 14.2 | 1.09 | 70 | 2.94 | 41.9 |
直近の株価は上昇が続いているなか、配当も増配基調ですので配当利回りは2%後半の水準です。
今期業績は増益見込みですが、PER、PBRに割安感はなく、配当性向は42%付近となっています。
投資判断
今までの内容からエスペックの投資判断について、直近の業績は部材不足の改善や円安の影響に加え、先端技術分野であるIoTやEV関連市場の好調もあり順調に推移しています。
また、配当も業績の低迷時には減配がありましたが基本的には増配傾向で、現在の配当性向にも余裕があります。
以上の点を踏まえると、株価はまだコロナ前の水準へ戻れていない事も含め、高配当株として気になる銘柄です。
【7888】三光合成
3番目の銘柄は三光合成で工業用の樹脂部品を製造するメーカーです。
自動車用の製品を多く手掛けており内装や外装に加え、機能部品なども製造しています。
そして、直近売上の海外比率は、アジアや北米を中心に6割を超えています。
直近決算
三光合成は5月決算のため、7月10日に本決算を発表しており、前期の通期最終利益は20億円と2億円の増益、配当は2円増配の年間16円としています。
今期予測は最終利益が23億円と3億円の増益見込みにしているなか、配当は2円増配の年間18円で発表しています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 三光合成 |
2020年5月期 | -4 |
2021年5月期 | 13 |
2022年5月期 | 18 |
2023年5月期 | 20 |
2024年5月期(会社予想) | 23 |
2020年からの通期最終利益を見ていきますが、コロナショックの影響で赤字に転落した2020年以降は増益が続いています。
前期業績は、資源、エネルギー価格高騰の影響はありましたが、コロナからの経済活動再開の動きや、高付加価値製品の受注と生産体制の整備を強化し、原価低減活動を積極推進した事で過去最高益となっています。
今期も先行き不透明な状況は続くなか、より付加価値の高い製品や金型の受注活動を積極化するとして、更に増益の予測にしています。
配当推移
銘柄名 | 三光合成 |
2015年 | 9 |
2016年 | 10 |
2017年 | 10 |
2018年 | 12 |
2019年 | 14 |
2020年 | 9 |
2021年 | 11 |
2022年 | 14 |
2023年 | 16 |
2024年(会社予想) | 18 |
2015年からの配当推移について、業績が赤字に転落した2020年は減配となっていますが、その2020年以外は概ね増配が続いています。
そして、直近の配当は年間2円ずつの増配となっており、今期予測も現状2円の増配見込みにしています。
三光合成の配当方針は、安定的な配当を継続していくと同時に、業績に応じ積極的に株主に還元するとしています。
株価推移
株価は2018年に849円まで上昇しましたが、コロナショックでは216円まで値を下げています。
その後は上下を繰り返しながらも上昇し、直近は700円前後まで値を戻しています。
株価指標(2023年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三光合成 | 7888 | 697 | 9.2 | 0.83 | 18 | 2.58 | 23.8 |
最近の株価は上昇していますので、増配は継続していますが配当利回りは2%半ばとなっています。
業績は増益が続いていますのでPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は24%付近と余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容から三光合成の投資判断について、最近の業績や配当は順調に推移していますが、株価も上昇している事で配当利回りは2%半ばまで低下しています。
しかし、今までの配当推移や現在の配当性向を考慮すると今後の継続的な増配にも期待できそうです。
以上の点を踏まえると、最低購入金額が7万円付近と格安な事も含め、最低単元くらい購入しておいても面白いかもしれません。
【6817】スミダコーポレーション
最後の銘柄はスミダコーポレーションで、コイルメーカーのスミダ電機を中核とする電子部品グループです。
車載用や家電用コイル部品、車載用モジュール製品などを製造しているなか、EVやxEV市場は大きく成長しているとして、北米に開発拠点を増強しています。
そして、今後はEV、xEV関連に注力し、マーケットリーダになるともしています。
ちなみにxEVとは、電気だけでなく水素や燃料電池など様々な方法で電動化する自動車の総称です。
直近決算
スミダコーポレーションは12月決算のため、7月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は32億円と前年同期比23億円の増益ですが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、EVやxEVおよびグリーンエネルギー関連のビジネスが拡大している事や為替の影響としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | スミダ |
2019年12月期 | 15 |
2020年12月期 | 8 |
2021年12月期 | 26 |
2022年12月期 | 50 |
2023年12月期(会社予想) | 51 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが変動が大きくなっており、2020年はコロナショックの影響により大きく減益となっています。
2021年以降の業績は半導体不足や原材料費高騰の影響を受けつつも、EVやxEV、太陽光発電関連の売上が伸びた事に加え、円安の影響で大きく業績が伸びており、前期は過去最高益を記録しています。
そして今期もEV関連の需要は拡大する見込みとして更に増益の予測にしているなか、第2四半期時点の通期進捗率は63%付近と好調を維持しています。
配当推移
銘柄名 | スミダ |
2015年 | 26 |
2016年 | 34 |
2017年 | 45 |
2018年 | 27 |
2019年 | 24 |
2020年 | 9 |
2021年 | 28 |
2022年 | 47 |
2023年(会社予想) | 47 |
2015年からの配当推移を見ていきますがこちらも変動が大きくなっており、2020年にかけては減配が続きました。
しかし、2021年以降は業績の回復を背景に大きく増配となっており、前期配当は数年前の高値を超えています。
今期は現状据え置きの見込みとしていますが、今後も業績が伸びて行けば更なる増配も期待できそうな印象です。
スミダコーポレーションの配当方針は配当による利益の配分を最優先に考え、連結配当性向25%~30%を勘案した配当を実施としています。
株価推移
株価は2017年7月に2400円の高値を付けた後は右肩下がりで、コロナショックでは533円まで値を下げました。
その後は上下を繰り返しながらも反発し、直近は1450円前後で推移しています。
株価指標(2023年9月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
スミダ | 6817 | 1443 | 9.2 | 0.79 | 47 | 3.26 | 30.1 |
最近の株価はじわじわ下落しているなか、配当は高水準を維持していますので配当利回りは3%前半となっています。
業績は好調ですのでPER、PBRは市場平均よりも割安で、配当性向は30%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容からスミダコーポレーションの投資判断ですが、最近の業績はEV市場の成長と共に好調を維持しており、配当も大きく増えています。
過去の配当推移を見ると、業績と連動して大きく増減を繰り返している点が気にはなりますが、裏を返せば今後更に業績が伸びていけば配当も大きく増える可能性がありそうです。
そして、好調な業績の割に株価は数年前の高値に届いていない状況ですので、今後の飛躍的な成長を期待して狙いたくなる銘柄です。
まとめ
今回は今後市場自体が大きく伸びる事が期待できるEV関連の4銘柄を検証しました。
いずれの銘柄も今後のEV市場の成長と共に業績が伸びていく事が期待できそうでしたが、現在の配当利回りは2%台の銘柄が中心で、高配当株としては少し寂しい水準です。
しかし、今後業績が伸びて行けば更なる増配が期待できそうでしたので、ある程度長い目でEV市場の成長と共に企業の成長を見守る覚悟が大切です。
また、今回まとめてきたEV市場については、現在詳しくまとめられた「EV戦争の覇者」を無料で見る事ができます。
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