今回は今期大幅な増配を繰り返し配当利回りが上昇している住友金属鉱山が高配当銘柄として投資可能か検証していきます。
住友金属鉱山とは
それでは本題ですが、まず住友金属鉱山の事業内容を簡単にまとめていきます。
住友金属鉱山は、金、銅、ニッケルなどの非鉄金属の鉱山開発や製錬、販売を手掛ける非鉄金属企業です。
現在は鉱山の開発、運営を行う「資源事業」、採掘した鉱物資源から高品質な金属素材を生み出す「製錬事業」、そしてその素材に時代が求める新たな価値を付加する「材料事業」の3つがメインの事業です。
資源開発から製錬、機能性材料の生産までを一貫して行う「3事業連携」は世界でも類を見ないビジネスモデルであり、大きな強みとしています。
非鉄金属とは
非鉄金属とは文字通り鉄以外のすべての金属のことです。銅やニッケル、金などは電気・電子部品、機械部品、建設材料、自動車など、現代社会を支えるさまざまな産業分野で利用されています。
また、急速に発展するデジタル化や、環境保全のための脱炭素化社会実現に向けた技術革新やエネルギー転換の必要性など、社会課題や時代のニーズの高まりを背景に、非鉄金属の活躍の場がさらに拡大していくことが見込まれている模様です。
住友金属鉱山の現状
住友金属鉱山の現状は、金属価格上昇により業績、株価が好転しています。
また直近では金の取り扱いがある事で、ロシアのウクライナ侵攻を受けた「有事の金」の連想から侵攻が始まった2月下旬より株価も更に上昇しています。
有事の金とは、金は現物で安心感がある為、戦争や紛争、急激な景気後退などで世界が混乱すると金の人気が高まり、金の価格が上昇する事です。
住友金属鉱山は銅山のあった地名から「別子」の通称で呼ばれる事も多く、私も証券会社で働いていた20年前に、当時何の紛争だったかは忘れましたが、「有事は別子」の合言葉で住友金属鉱山を売買していた記憶があります。
20年経っても戦争で住友金属鉱山が連想されてしまうのは悲しい事ではありますが、今回の一件でそんな事を思い出しました。
住友金属鉱山直近決算
住友金属鉱山は2月8日に第3四半期決算を発表しています。
第3四半期時点の最終利益は1700億円と前年同期比で1246億円の増益となっており、通期最終予測は2480億円へ340億円上方修正しています。
年間配当は第3四半期決算後の2月24日に時期が未定だったチリのシエラゴルダ銅鉱山に係る権益の全保有持分の譲渡が実行されたとの事で今期3回目の増額を発表し、年間配当は258円の見込みとしています。
業績好調の要因は、ワクチン接種の進展などに伴う景気回復を背景に販売環境は概ね良好としており、更に高値圏で推移した金属価格の追い風もあったとの事。
株価推移
住友金属鉱山の株価はコロナショック時に1800円台まで売られましたが、その後は値を戻しています。そして今年に入り業績好調を背景に上昇スピードが早まり、直近では冒頭でお伝えした有事の金の影響もあり6000円を超える水準での動きです。
業績推移
住友金属鉱山の2018年からの通期最終利益推移と2020年からの第3四半期時点の最終利益を見ていきます。
第3四半期時点最終利益(億円)
銘柄名 | 住友金属鉱山 |
2020年3月期第3四半期 | 514 |
2021年3月期第3四半期 | 454 |
2022年3月期第3四半期 | 1700 |
2020年3月期通期進捗率(%) | 84.8 |
2021年3月期通期進捗率(%) | 47.9 |
2022年3月期通期進捗率(%) | 68.5 |
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 住友金属鉱山 |
2018年3月期 | 902 |
2019年3月期 | 667 |
2020年3月期 | 606 |
2021年3月期 | 946 |
2022年3月期(会社予想) | 2480 |
2021年3月期より金属価格の上昇もあり業績が急回復していますが、そこから更に今期の業績は伸びている状況です。
しかし、今期の大幅増益は金属価格の上昇が主な要因ですので、今後金属価格が落ち着いた時には注意が必要で、実際住友金属鉱山も2月に発表した中期経営計画で2024年の最終利益を今期の半分以下となる1180億円で試算しています。
配当推移
銘柄名 | 住友金属鉱山 |
2015年 | 96 |
2016年 | 62 |
2017年 | 22 |
2018年 | 83 |
2019年 | 73 |
2020年 | 78 |
2021年 | 121 |
2022年(会社予想) | 258 |
住友金属鉱山の2015年からの配当推移を見ていきますが、増減の激しい展開が続いており、そして現状今期の配当は前期から2倍以上の予測になっています。
住友金属鉱山の配当方針は、株主のみなさまへの適切な利益還元を経営の最重要課題の一つと考えており、さらなる企業価値向上をめざすとともに配当性向35%以上を配当方針としています。
また配当については、業績連動型を継続としています。
住友金属鉱山の株価等指標(2022年4月1日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
住友金属鉱山 | 5713 | 6183 | 6.85 | 1.33 | 258 | 4.17 | 28.5 |
住友金属鉱山の配当利回りは、株価は上昇していますが配当増額が続いている為、4%前後の水準です。
業績の上方修正もあり配当性向は20%台で推移しています。
住友金属鉱山の今後
住友金属鉱山は今年2月に中期経営計画を発表しており、長期ビジョンとして「世界の非鉄リーダー」を目指すとしています。
その為に3つの事業で注力するポイントをまとめています。
資源事業
資源事業では企業価値拡大の為、大型プロジェクトを推進しておりチリのケブラダ・ブランカ銅鉱山のプロジェクトは2022年後半の生産開始を予定との事。
カナダのコテ金開発は周辺鉱区の炭鉱により新たな資源量を確認したとの事で将来の新規開発によるプロジェクト価値向上を目指すとの事です。
精錬事業
製錬事業は、ニッケル事業のバリューチェーン強化と銅の事業競争力強化を重要テーマに掲げています。
ニッケル事業のバリューチェーンは、インドネシアのポマラプロジェクトについて電動車向けニッケル年産4万トンに向けて早期の投資決定を目指すとしており、電池、機能性材料事業向けニッケル系原料の安定供給を目指すとしています。
銅の事業競争力強化は、更なる実収率の向上や市場ニーズに合わせた品質作りこみ、構内物流の最適化を進める方針です。
材料事業
電池材料は、世界トップクラスのニッケル系正極材シェアを目指すとしています。
機能性材料では、ポートフォリオ経営の強化とロードマップ経営の導入、収益最大化及び将来の企業価値向上に向けた施策を展開していくとの事です。
住友金属鉱山の投資判断
今までの点を踏まえ住友金属鉱山の投資判断ですが、非鉄金属企業として企業規模や企業内容に問題は無く、他社が簡単には追随出来ないビジネススタイルには魅力を感じます。
しかし高配当銘柄として考えた場合、配当は業績連動型としており、その業績も金属価格の上下によって大きく影響を受ける為、中長期保有の銘柄としては狙いにくいところです。
途中で触れた様に住友金属鉱山は中期経営計画内で2024年の最終利益を今期の半分以下と予測しています。仮に配当も今期の半分で計算すると配当利回りは2%前後になってしまいます。
もちろん現在の株価は好業績や有事の金からの連想で上がっている状況ではありますので、数年後の株価は今よりも下がり配当利回りは上昇している可能性もあります。
以上の点を踏まえると業績、配当の振れ幅が大きく、高配当銘柄としては狙いにくいところがありますが、将来的に商品市況が落ち着き、世界に平和が戻った時に株価が下がっていれば狙ってみても面白い銘柄かもしれません。
個人的にも世界に平和が戻る事を祈りつつ、住友金属鉱山の動向を見守りたいと思います。
住友金属鉱山の銘柄検証はYouTubeで動画版も投稿していますので宜しくお願いします。
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