コロナ以降は世界的なインフレが続いていますが、原油価格はその中でも代表的な商品市況の1つだと思います。
コロナショックで需要が減退した2020年には、まさかのマイナス価格まで下落しましたが、その後はコロナからの経済回復などの影響で100ドルを超える水準まで急反発しています。
そして、去年後半以降は70ドル台まで落ち込む場面があったなか、最近は緊迫する中東情勢を背景に再び上昇傾向となりましたが、直近は今後の世界経済減速を懸念して下落傾向となるなど落ち着きがありません。
原油価格は世界の景気動向や中東の地政学リスクに加え、原油産油国の思惑なども絡むため、今後の価格推移を予想する事は難しいですが、今回は原油価格下落時に株価が下がりやすい4つの高配当株を検証していきます。
【1605】INPEX
最初の銘柄はINPEXで石油や天然ガスなどの開発生産を手掛ける国内最大手の石油開発企業です。
現状は石油、天然ガスの開発生産がメイン事業ですが、脱炭素社会への流れを受け再生可能エネルギーやカーボンリサイクル事業にも注力しています。
直近決算
INPEXは12月決算ですので、11月9日に第3四半期決算を発表しており、最終利益は2803億円と前年同期比137億円の増益となっています。
業績好調に伴い、通期最終利益を3400億円へ200億円上方修正し、年間配当に変更はありません。
業績上方修正の要因は、原油価格が底堅く推移している事や円安水準が続いているため、それぞれ前提条件を引き上げたためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | INPEX |
2019年12月期 | 1235 |
2020年12月期 | -1116 |
2021年12月期 | 2230 |
2022年12月期 | 4382 |
2023年12月期(会社予想) | 3400 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、増減が激しくなっています。
2020年はコロナショックの影響などで赤字に転落していますが、前期は原油及び天然ガスの販売価格上昇に加え、円安の追い風もあり過去最高益の水準へV字回復しました。
今期は第3四半期決算で油価や為替の設定を見直した事で通期最終利益の見込みを200億円上方修正していますが、それでも減益見込みとなっています。
しかし、第3四半期時点の通期進捗率は82%付近となっていますので、最終着地で更なる上積みがあるかもしれません。
配当推移
銘柄名 | INPEX |
2015年3月 | 18 |
2016年3月 | 18 |
2017年3月 | 18 |
2018年3月 | 18 |
2019年3月 | 24 |
2019年12月 | 30 |
2020年12月 | 24 |
2021年12月 | 48 |
2022年12月 | 62 |
2023年12月(会社予想) | 74 |
2015年からの配当推移について、INPEXは2019年より12月期決算へ変更していますので少し変則的ですが概ね安定して増配している印象で、特にここ最近の増配幅は業績好調を背景に大きくなっています。
INPEXの配当方針は2022年度から2024年度の中期経営計画期間中は、総還元性向 40%以上を目途とし、年間配当金の下限を30円に設定するなか、来期の配当金は今期を下回らない金額とするよう最大限努力するとしています。
株主優待
INPEXには株主優待が設定されており、保有株数や保有継続年数によってクオカードがもらえますので内容を表にまとめています。
保有株数 | 保有継続年数 | 金額 | 優待品 | ||||
400株以上 | 1年以上 | 1000円 | QUOカード | ||||
2年以上 | 2000円 | ||||||
3年以上 | 3000円 | ||||||
800株以上 | 1年以上 | 2000円 | カタログギフト | ||||
2年以上 | 3000円 | ||||||
3年以上 | 5000円 |
400株以上かつ1年以上継続が最低条件ですので少しきつめの条件ですが、長期保有者には有難い内容です。
株価推移
株価は2020年10月に492円まで下げた後は急速に値を戻し、去年6月には1831円まで上昇しました。
しかし、その後は反落し1300円付近まで値を下げましたが、直近は2000円前後で推移しています。
株価指標(2023年11月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
INPEX | 1605 | 2040 | 7.6 | 0.60 | 74 | 3.63 | 27.7 |
最近の株価は上昇していますが、大幅増配も続いているため配当利回りは3%半ばとなっています。
今期業績は減益見込みですがPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は28%付近と余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容からINPEXの投資判断について、今期業績は減益見込みですが数年前と比較すると大きく伸びており、配当も大幅増配が続いています。
特にここ数年の増配幅は大きく、最近の配当推移を見ていると株主還元に力を入れ始めている印象です。
その分、最近の株価は上昇していますが、指標面は割安で配当性向にも余裕があります。
以上の点を踏まえると、今後も業績は資源価格の影響で大きく増減しそうですが、原油価格下落で株価が下がる場面は狙いたくなる銘柄です。
【5020】ENEOS
2番目の銘柄はENEOSです。
ENEOSは日本を代表するエネルギー・資源・素材企業グループで、石油や天然ガス開発、金属事業などを手掛けています。
サービスステーション「ENEOS」を展開しており、給油所数は全国で1万を超えています。
また、再生エネルギーや水素・バイオ燃料などエネルギートランジションの実現に向けた取り組みも加速させています。
直近決算
ENEOSは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は1716億円と前年同期比771億円の減益となっています。
第2四半期決算は前期比減益でしたが、通期最終利益を2400億円へ600億円上方修正しており、配当は従来の予想通り年間22円で変更はありません。
業績上方修正の要因は、白油マージンや化学品などのマージンが良化したことや製油所トラブル改善効果や電気の売価改善などの影響としています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | ENEOS |
2019年3月期 | 3223 |
2020年3月期 | -1879 |
2021年3月期 | 1139 |
2022年3月期 | 5371 |
2023年3月期 | 1400 |
2024年3月期(会社予想) | 2400 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが、増減が激しくなっています。
2020年はコロナショックによるガソリン需要の減少に加え原油価格の下落で大きな赤字に転落していますが、2022年は資源価格の上昇などにより石油、天然ガスや金属セグメントが大幅増益となり過去最高益の水準へ大きく回復しています。
しかし、前期は原油価格の在庫影響益の反転や石化市況の悪化に加え、電力事業で減損のため大きく減益となっています。
そして、今期は底堅く推移している原油価格による白油マージンの良化や継続している円安により、先程お伝えした様に第2四半期決算で通期最終利益の上方修正を発表していますが、それでも進捗率は71%付近と更なる上積みが期待できる状況です。
配当推移
銘柄名 | ENEOS |
2015年 | 16 |
2016年 | 16 |
2017年 | 16 |
2018年 | 19 |
2019年 | 21 |
2020年 | 22 |
2021年 | 22 |
2022年 | 22 |
2023年 | 22 |
2024年(会社予想) | 22 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、2020年からは22円で変わっていないです。
先ほど触れた様に最近の業績は大きく上下しており、2020年に至っては赤字に転落していますが、業績とは関係なく配当は安定しています。
ENEOSの配当方針は安定的な配当継続に配慮し、2025年度までの中期経営計画中は年間22円を下限としたうえ、3か年平均で在庫影響除き当期利益の50%以上を配当と自社株買いで還元するとしています。
株価推移
株価はコロナショックで320円まで値を下げましたが、約1年をかけて500円付近まで上昇しています。
その後は400円台で停滞する期間が長かったですが、今年8月以降は原油高の影響もあり600円台まで上昇しましたが、直近は550円前後で推移しています。
株価指標(2023年11月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
ENEOS | 5020 | 544.8 | 6.8 | 0.53 | 22 | 4.04 | 27.6 |
最近の株価は値動きが激しくなっていますが、配当は22円で安定しているため配当利回りは4%前後となっています。
今期は増益見込みとしているなかPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は28%付近と余裕を感じる水準です。
投資判断
今までの内容からENEOSの投資判断について、業績は商品市況の影響で大きく上下していますが、配当は一定の水準で安定しており、また他の石油関連銘柄の配当推移を踏まえると、そろそろ増配も期待したくなります。
そんななか、株価は400円台で停滞する期間も長かったですが、最近の株価は少し動き出した感じもあります。
しかし、それでも他の高配当株と比較して出遅れている雰囲気はありますので、原油価格の下落で値を下げる場面があれば狙いたくなる銘柄です。
【5021】コスモエネルギーHD
3番目の銘柄はコスモエネルギーHDです。
コスモエネルギーHDは石油製品の精製・販売を手掛ける石油元売りの大手企業です。
原油の調達や自主開発から輸入・備蓄・精製まで手掛けており、サービスステーションは全国に約3000カ所展開しています。
また、風力発電や次世代エネルギー事業への取り組みも進めています。
直近決算
コスモエネルギーHDは11月8日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は360億円と前年同期比588億円の減益となっています。
第2四半期決算は前期比減益でしたが、通期最終利益の見込みを780億円へ230億円上方修正しており、配当は年間300円へ50円の増額を発表しています。
業績上方修正の要因は、定修および製油所トラブルの影響はあったものの、 マージン良化や経費などの改善によるとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | コスモHD |
2020年3月期 | -281 |
2021年3月期 | 859 |
2022年3月期 | 1388 |
2023年3月期 | 679 |
2024年3月期(会社予想) | 780 |
2020年からの通期最終利益について、コロナショックの影響で赤字に転落した後は2022年にかけて増益が続き、最近は減益傾向となっています。
2022年にかけて増益が続いた要因は、コロナからの経済回復や原油価格上昇の影響としており、前期は原油価格の在庫影響益反転や製油所トラブル、インフレによるエネルギーコスト上昇などにより減益になっています。
そして、今期も原油価格下落による減益を見込み、期初当初は減益予測になっていましたが、先程お伝えした様に第2四半期決算で上方修正した事により増益の見込みになっています。
配当推移
銘柄名 | コスモHD |
2015年 | 0 |
2016年 | 40 |
2017年 | 50 |
2018年 | 50 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 80 |
2022年 | 100 |
2023年 | 150 |
2024年(会社予想) | 300 |
2015年からの配当推移について、据え置きが続く期間もありますが減配はありません。
そんななか、最近の増配幅は大きくなっており、今期も第2四半期で50円増額した事もあり、年間配当は150円の大幅増配見込みになっています。
コスモHDの配当方針は3ヵ年累計総還元性向60%以上の実現のため、今後の業績、資本効率、財務健全性等の進捗を確認のうえ、追加還元を適宜適切に検討するとの事です。
また、PBR1倍の早期達成およびPBR1倍以上の定着を目指すとし、下限配当は年間250円としています。
株価推移
株価はコロナショックで1262円まで下げましたが、その後は停滞する時期を挟みながらも上昇しています。
そして、今年夏以降は上昇ペースが加速し、直近は今回の決算を受けて5800円前後まで上昇しています。
株価指標(2023年11月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
コスモHD | 5021 | 5810 | 6.5 | 0.90 | 300 | 5.16 | 33.7 |
最近の株価は上昇が続いていますが、大幅増配を受けて配当利回りは5%台と高水準です。
今期業績は増益見込みですのでPER、PBRは市場平均より割安で、配当性向は34%付近となっています。
投資判断
今までの内容からコスモエネルギーHDの投資判断について、今期業績も増益見込みに修正されたなか、配当も大きく増配となった事で配当利回りは5%台と高水準です。
そんななか、最近の配当が大きく増配となっている要因は、旧村上ファンド系の投資会社が株式の約2割を保有した事で、株主還元の充実などを求めている事も影響している印象です。
いわゆる「モノ言う株主」に対する問題が、今後どの様に展開するかは分かりませんが、色々な意味で高配当株として気になる銘柄です。
【8133】伊藤忠エネクス
最後の銘柄は伊藤忠エネクスです。
伊藤忠エネクスは伊藤忠グループ中核のエネルギー商社で、エネルギー商社としての売上は業界トップクラスとなっています。
販路はガソリンスタンドや工場、病院などの法人向けのほか、一般家庭へも石油製品やLPガスなどを販売しています。
また、自動車ディーラーや水素ステーション、蓄電池事業なども手掛けています。
直近決算
伊藤忠エネクスは10月31日に第2四半期決算を発表しており、最終利益は89億円と前年同期比20億円の増益となっていますが、通期最終利益、年間配当予測に変更はありません。
業績好調の要因は、前年同期好調だった産業ビジネス事業における反動などがありましたが、電力小売事業・自動車ディーラー事業の貢献及び固定資産売却益などのためとしています。
通期最終利益(億円)
銘柄名 | 伊藤忠エネクス |
2019年3月期 | 115 |
2020年3月期 | 120 |
2021年3月期 | 121 |
2022年3月期 | 131 |
2023年3月期 | 138 |
2024年3月期(会社予想) | 135 |
2019年からの通期最終利益を見ていきますが順調に増益が続いており、前期までで8期連続の過去最高益を更新しています。
業績好調の要因について、2022年はLPガスの輸入価格上昇やメガソーラーの子会社化に伴う評価益などのためで、前期は外航船向けの重油販売が好調に推移した事などで産業ビジネス部門が堅調に推移したためとしています。
今期は前期の反動なども考慮し現状減益見込みとしていますが、第2四半期時点の通期進捗率は66%付近と順調に推移していますので、今期も増益となる可能性は十分ありそうです。
配当推移
銘柄名 | 伊藤忠エネクス |
2015年 | 22 |
2016年 | 24 |
2017年 | 32 |
2018年 | 40 |
2019年 | 42 |
2020年 | 44 |
2021年 | 50 |
2022年 | 48 |
2023年 | 50 |
2024年(会社予想) | 52 |
2015年からの配当推移を見ていきますが順調に増配が続いており、2022年は2円減配となっていますが、2021年は設立60周年の記念配当が6円出ていましたので、記念配当を考慮すると増配が継続している事になります。
そして、今期も業績は減益見込みとしていますが、配当は2円増配の予測にしています。
伊藤忠エネクスの配当方針は継続的な安定配当を方針として掲げ、 連結配当性向40%以上を強く意識した上で、2024年度までの中期経営計画期間中は累進配当を実施としています。
株価推移
株価はコロナショック時に716円まで売られましたが、2021年3月には1176円まで上昇しました。
その後は1000円付近で停滞する期間も長かったですが、今年に入るとじわじわ上昇し直近は1500円前後で推移しています。
株価指標(2023年11月10日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
伊藤忠エネクス | 8133 | 1557 | 13.0 | 1.10 | 52 | 3.34 | 43.5 |
最近の株価は上昇していますが、増配が継続している事で配当利回りは3%半ばとなっています。
今期業績は減益見込みという事もありPER、PBRに割安感はなく、配当性向は43%付近と方針通りの水準です。
投資判断
今までの内容から伊藤忠エネクスの投資判断ですが、業績は過去最高益が続いているなか配当も記念配当を考慮すると増配が継続しています。
今期も現状は減益見込みになっていますが、第2四半期までの進捗率を考慮すると今期も増益での着地となる可能性は高そうです。
その分最近の株価は上昇していますが、それでも配当利回りは3%台を維持していますので、ポートフォリオの一部で保有しておきたい銘柄です。
まとめ
今回は原油価格下落に買いたいと思う4つの高配当株を検証しました。
4銘柄とも原油価格の上昇によって業績の上積みが期待できる事業内容ですが、反対に原油価格下落時には業績が落ち込みやすいため、株価は下落傾向になります。しかし、高配当株投資においても株価が少しでも安い時に購入する事は大切ですので、石油関連銘柄が原油価格下落時に株価を下げる場面は購入チャンスとなる場合もあります。
そして、冒頭でもお伝えした様に原油価格は様々な要因で上下しますので、将来的に原油価格が上昇する場面では、石油関連銘柄の株価も上昇が期待できます。
しかし、脱炭素社会への動きが加速する現代社会において、石油需要は今後減退していく事が想定されます。実際、石油元売り銘柄は原油依存体質からの脱却を進めており、再生可能エネルギーなど次世代エネルギーへの取り組みを加速させています。
もちろん、石油からの脱却は簡単な問題ではないと思いますが、中長期投資となる高配当株投資では、その辺りまで考慮して投資を検討したいところです。
原油価格下落時に買いたい4つの高配当株はYouTubeで動画版も投稿していますので、あわせてご覧ください。
コメント