今回は三菱グループの非鉄メーカー三菱マテリアルについてまとめていきます。
銅を中心とした非鉄金属を取り扱っていますが、最近の株価はここ10年間で振り返っても安値圏ですので、三菱マテリアルの現状と今後を踏まえ高配当銘柄として投資可能か検証していきます。
【5711】三菱マテリアル
三菱マテリアルは、三菱グループの大手非鉄メーカーで銅の加工やパソコン・スマホなどで使用する電子材料、自動車や航空機の部品加工に不可欠な超硬製品など幅広い製品を提供しています。
⾮鉄⾦属などの基礎素材から、⾦属加⼯、半導体関連・電⼦部品、エネルギー・環境ビジネスなど多⾓的に事業を展開しており、2021年3月期時点の海外売上比率は45%と約半数を占めています。
非鉄金属とは
非鉄金属とは文字通り鉄以外のすべての金属のことです。銅やニッケル、金などは電気・電子部品、機械部品、建設材料、自動車など、現代社会を支えるさまざまな産業分野で利用されています。
また、急速に発展するデジタル化や環境保全のための脱炭素化社会実現に向けた技術革新、エネルギー転換の必要性など、社会課題や時代のニーズの高まりを背景に、非鉄金属の活躍の場がさらに拡大していくことが見込まれています。
【5711】三菱マテリアルの現状
海外との取引も多い事でコロナ感染拡大の影響を大きく受けましたが、前期はコロナからの経済回復や商品市況上昇の影響で業績を大きく戻しています。
しかし、今期については前期の反動や原材料費高騰の影響で厳しい状況になっています。
また、事業を多角的に広げた事で採算の悪い事業も増えており、事業ポートフォリオの最適化を進めているところです。
【5711】三菱マテリアル直近決算
三菱マテリアルの2022年3月期最終利益は450億円と206億円の増益、配当は40円増配の年間90円としています。
今期予測は最終利益が200億円見込みと250億円の減益、配当は40円減配の年間50円で発表しています。
前期業績好調の要因は、銅やパラジウムなどの価格上昇で採算が上向いたほか、権益を持つチリの銅鉱山からの配当金増、半導体関連及び自動車関連の需要が堅調に推移した事に加え円安の進行によるものとしています。
通期最終利益(億円)推移
銘柄名 | 三菱マテリアル |
2019年3月期 | 12 |
2020年3月期 | -728 |
2021年3月期 | 244 |
2022年3月期 | 450 |
2023年3月期(会社予想) | 200 |
2019年からの最終利益を見ていきますが浮き沈みの激しい展開が続いています。
2020年はコロナショックの影響で大幅赤字に転落していますが、前期は商品市況の上昇もあり大幅増益となっています。
しかし、今期はチリ鉱山の配当金が渇水による生産減などの影響で減るほか、原材料費高騰、セメント事業、アルミ事業の再編などの影響により大幅減益見込みとなっています。
配当推移
銘柄名 | 三菱マテリアル |
2015年 | 80 |
2016年 | 100 |
2017年 | 60 |
2018年 | 80 |
2019年 | 80 |
2020年 | 80 |
2021年 | 50 |
2022年 | 90 |
2023年(会社予想) | 50 |
2015年からの配当推移については業績と連動して増減の激しい展開が続いていますが、特にここ数年は大幅増配と大幅減配を繰り返しており落ち着きがありません。
三菱マテリアルの配当方針は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識し、安定的かつ継続的に実施していくことを基本方針としながら、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断のうえ決定する方針としており、今期の配当は下限を50円としています。
株価推移
株価はコロナショックで1783円まで売られた後は上下を繰り返しながら戻しました。
しかし、2021年5月に2745円の高値を付けた後は右肩下がりの状況が続いており、直近の株価は1900円台後半で推移しています。
株主優待
三菱マテリアルには株主優待がありますので内容をまとめています。
優待内容は「マイ・ゴールドパートナー」の金またはプラチナの購入・売却時に1g当たり5円の優待、銀購入・売却時に1kg当たり100円の優待や地金購入・売却時に1g当たり5円の優待が利用できます。
また、グループ会社が運営する観光坑道を入場料無料(優待案内状1枚で同一日内5名様まで)で利用可能です。
三菱マテリアルの株主優待は保有株数に関係なく利用できますので貴金属の売買を検討している方や坑道の近く(秋田県、新潟県、静岡県、兵庫県)に住んでいる方には単元未満株での購入もおすすめです。
株価指標(2022年7月22日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱マテリアル | 5711 | 1981 | 12.9 | 0.44 | 50 | 2.52 | 32.6 |
株価は右肩下がりの状況が続いていますが、今期大幅減配により配当利回りは2%半ばの水準です。
業績低迷によりPERに割安感はありませんが、配当性向は30%付近と余裕を感じます。
【5711】三菱マテリアルの今後
三菱マテリアルは中期経営戦略の方針として事業ポートフォリオの最適化を掲げています。
これまでは課題事業の分社化、事業譲渡等、事業領域の適正化が先行していましたが、 2022年度は収益構造の改善を含む事業競争力向上による収益力改善に重点を置くとの事です。
そしてポートフォリオの構築は、収益性と成⾧性の2軸で事業の方向性を決定するとの事で収益性はROIC、成⾧性はEBITDA成⾧率などにより評価するとの事です。
ROICとは投下資本利益率の事で、事業活動のために投じた資金でどの程度の利益を稼げているかを測る指標です。
EBITDAは、利払前・税引前・減価償却前利益の事で、純利益は税率や借入金利によって異なる為、その様な違いを最小限に抑えた指標となっています。
【5711】三菱マテリアルの投資判断
今までの点を踏まえ三菱マテリアルの投資判断ですが業績の増減が激しく、その度に配当も連動して上下していますので中長期の高配当株としては投資しにくいところがあります。
今後について1番のポイントは事業ポートフォリオの最適化が順調に進むかだと思います。
セメント事業などの将来性が見込みにくい事業を再編し、収益力が見込める事業へ注力するとの事ですが、どの程度で業績に反映してくるかは不透明です。
今期は商品市況の落ち着きや銅鉱山からの配当金減により大幅減益が予想されている事もあり、株価は冴えない展開が続いていますが、現在の配当利回りは2%半ばと高配当株としては物足りない水準です。
しかし、企業規模は三菱グループとして安定しており、企業形態も他社が簡単には追随できないものを持っています。
以上の点から三菱マテリアルについては、今後のポートフォリオ最適化の状況を見守りつつ、暫くは様子を見る感じが現状は良いような気はします。
三菱マテリアルの投資判断はYouTubeで動画版を投稿していますのであわせてご覧ください。
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