高配当株投資家にとって保有しているだけで配当金が増える「増配」は非常に有難い存在です。
先日発表された3月期銘柄の本決算でも増配が相次いだ様に最近の日本企業は株主還元姿勢の高まりもあり、増配を行う企業も増えている様に感じます。
そこで今回は20年以上連続して増配している日本を代表する連続増配企業を5銘柄個別にまとめていきます。
しかし、20年以上連続して増配しているからといって、今後の増配を保証してくれるものではありませんので、各銘柄の現状や今後を踏まえて高配当連続増配銘柄として投資可能か検証していきます。
【4452】花王 32期連続増配
花王は、アタックなどでお馴染みの洗剤や石鹸、ボディソープなどのトイレタリー商品、また化粧品など普段の生活で使用する商品を製造、販売する日用品メーカーです。
業績はコロナ感染が拡大した2020年はハンドソープ、手指消毒液などの衛生関連商品の特需もありましたが、化粧品のインバウンド需要消滅や最近の原材料費高騰で厳しい状態が続いています。
しかし、配当は2021年迄で32期連続増配を継続中と日本記録を更新中です。
配当推移
銘柄名 | 花王 |
2015年 | 80 |
2016年 | 94 |
2017年 | 110 |
2018年 | 120 |
2019年 | 130 |
2020年 | 140 |
2021年 | 144 |
2022年(会社予想) | 148 |
花王の配当推移をまとめていますが、低迷する業績とは関係なく増配が続いています。
花王の配当方針は、安定的・継続的な配当の実施を通じた利益還元を重視しており、具体的な数値としては配当性向40%を目標にしていますが、コロナショック以降は業績が低迷するなか増配を続けている事で直近の配当性向は60%付近まで上昇しています。
株価推移
株価は2018年と2020年に9000円を超える場面もありましたが、そこからは下落が続き、今年3月には5000円を割れる水準まで売られました。
6月に入ってからはディフェンシブ銘柄が買われた事や権利取りの動きもあり5700円付近まで戻しているところです。
株価指標(2022年7月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
花王 | 4452 | 5708 | 22.9 | 2.74 | 148 | 2.59 | 59.4 |
直近の株価は上昇していますが長期的にみると株価は下落が続いており、その間も配当は増配が続いていますので配当利回りは2%半ばの水準です。
しかし業績低迷の影響でPER、PBRに割安感はなく、配当性向は60%付近と目標としている40%を大きく上回っています。
【8566】リコーリース 27期連続増配
リコーリースは複合機、パソコンなどのオフィス関連機器、医療機器、産業工作機械、計測器などのファイナンス・リースや法人向けに融資を行っているリース会社です。
業績はコロナショックでも減益になっておらず、順調に増益が続いています。
そして配当は27期連続で増配中と花王に次ぐ記録を更新中です。
配当推移
銘柄名 | リコーリース |
2015年 | 50 |
2016年 | 55 |
2017年 | 60 |
2018年 | 70 |
2019年 | 80 |
2020年 | 90 |
2021年 | 100 |
2022年 | 120 |
2023年(会社予想) | 135 |
リコーリースの配当は27期連続の増配中ですが、最近の増配幅は数年前と比較して大きくなっており、前期は20円、今期は15円の増配予定と増配額にも勢いが付いています。
リコーリースの配当方針は2020年度~2022年度の中期経営計画の目標として、配当性向30%(2023年3月期)を目指すとしています。
株価推移
株価はコロナショックで2423円まで売られた後は順調に値を戻し、今年に入ってからは4000円に迫る水準まで上昇しました。その後はロシアのウクライナ侵攻を受けて売られる場面もあり、直近は3500円台で推移しています。
株価指標(2022年7月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
リコーリース | 8566 | 3545 | 8.1 | 0.54 | 135 | 3.81 | 30.8 |
増配ペースが上がるなか株価は停滞していますので配当利回りは3%後半の水準です。
業績は順調に増益傾向ですのでPER、PBRは市場平均と比較して割安で、配当性向は30%付近と方針通りの水準です。
【7466】SPK 24期連続増配
SPKは自動車や産業、建設機械の部品を中心に取り扱っており、メーカー、モデルを問わず、あらゆる国産車、輸入車を対象に補修部品などを供給しています。
業績はコロナショックで2021年3月期は大幅減益となりましたが、前期はコロナからの経済回復を背景に回復傾向で、今期業績はコロナ前を上回る最終利益見込みとなっています。
そして配当は24期連続増配を継続中です。
配当推移
銘柄名 | SPK |
2015年 | 29.5 |
2016年 | 30.5 |
2017年 | 31.5 |
2018年 | 32.5 |
2019年 | 33.5 |
2020年 | 36 |
2021年 | 37 |
2022年 | 40 |
2023年(会社予想) | 44 |
2015年からの配当推移を見ていきますが、SPKは2020年に株式を2分割していますので2020年より前の配当は分割調整した数字です。
数年前までは年間1円ずつの増配でしたが、前期は3円、今期は4円増配見込みと以前と比較して増配ペースに勢いが付いてきています。
SPKの配当方針は中長期的な視野で財務体質の強化と業績との連動を考え、積極的に実施していく方針としています。
株価推移
株価はコロナショックで1112円まで売られた後は1500円を超える水準まで急速に戻しました。
しかし2021年夏以降は1250円付近から1400円付近での動きとなっており、直近の株価は1300円台後半で推移しています。
株価指標(2022年7月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
SPK | 7466 | 1378 | 8.1 | 0.68 | 44 | 3.19 | 25.9 |
増配ペースが上がるなか株価は動きが止まっていますので配当利回りは3%前半の水準です。
業績の回復でPER、PBRは市場平均と比較して割安で配当性向は25.9%とまだまだ余裕を感じる水準です。
【4967】小林製薬 23期連続増配
小林製薬は家庭用の医薬品や健康食品などを製造しており「アンメルツ」や「熱さまシート」など多数のヒット商品を販売しています。
業績はコロナショックでインバウンド需要が減少しましたが、除菌・衛生関連用品の需要を取り込んだ事もあり増益が続いている状況で、配当は23期連続増配を継続中です。
配当推移
銘柄名 | 小林製薬 |
2016年 | 52 |
2017年 | 58 |
2018年 | 66 |
2019年 | 73 |
2020年 | 77 |
2021年 | 83 |
2022年(会社予想) | 85 |
2016年からの配当推移を見ていきますが、ほとんどの年で5円以上の安定した増配となっており、今期は現状2円の増配予定ですが、今後の業績次第では更なる増配があるかもしれません。
小林製薬の配当方針は、安定した配当を継続していくこと、および中間配当と期末配当の年2回剰余金の配当を行うことを基本方針としながら、連結業績を反映した配当政策を進めていくとしています。
株価推移
株価は2020年12月に1万3000円を超える水準まで上昇していましたが、そこからは右肩下がりの状況です。去年8月に8300円付近まで売られた後、今年3月には1万円の大台まで戻しましたが、直近は再び8800円付近まで値を下げています。
株価指標(2022年7月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
小林製薬 | 4967 | 8830 | 33.8 | 3.55 | 85 | 0.96 | 32.5 |
増配が続くなか株価は下落が続いていますが、配当利回りは1%前後ですので高配当株としては物足りない水準です。
PER、PBRに割安感はありませんが、配当性向は32%付近と余裕を感じます。
【8593】三菱HCキャピタル 23期連続増配
三菱HCキャピタルは、2021年4月に三菱UFJリースと日立キャピタルの合併により誕生した総合リース会社です。
業績は欧米を中心とした事業の伸長や航空関連における売却益などにより増益傾向で、配当は小林製薬と同じ23期連続増配を継続中です。
配当推移
銘柄名 | 三菱HCキャピタル |
2015年 | 9.5 |
2016年 | 12.3 |
2017年 | 13 |
2018年 | 18 |
2019年 | 23.5 |
2020年 | 25 |
2021年 | 25.5 |
2022年 | 28 |
2023年(会社予想) | 31 |
2015年からの配当推移をまとめていますが、順調に増配傾向です。
コロナショック時の2021年は増配額が0.5円とぎりぎりの増配でしたが、その2021年以外は安定した増配額です。
三菱HCキャピタルの配当方針は、2023年4月にスタート予定の新中期経営計画期間中の配当性向イメージである40%程度に沿って決定する方針としています。
株価推移
株価は2020年11月に437円まで下がりましたが、その後は上下を繰り返しながら値を戻しています。今年に入ってからはロシアのウクライナ侵攻を受けて521円まで下落しましたが、その後は5月に発表した2022年の本決算内容を受けて株価は600円台を回復しています。
株価指標(2022年7月8日時点)
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
三菱HCキャピタル | 8593 | 616 | 8.0 | 0.68 | 31 | 5.03 | 40.4 |
最近の株価は上昇傾向ですが安定して増配が続いていますので配当利回りは5%前後の水準です。
PER、PBRは市場平均と比較して割安で配当性向は40%付近と方針通りの水準です。
連続増配ベスト5(2022年7月8日時点)
今回検証した20年以上増配を継続している5銘柄を表にまとめました。
銘柄 | コード | 株価 | PER | PBR | 配当 | 配当利回り | 配当性向 |
花王 | 4452 | 5708 | 22.9 | 2.74 | 148 | 2.59 | 59.4 |
リコーリース | 8566 | 3545 | 8.1 | 0.54 | 135 | 3.81 | 30.8 |
SPK | 7466 | 1378 | 8.1 | 0.68 | 44 | 3.19 | 25.9 |
小林製薬 | 4967 | 8830 | 33.8 | 3.55 | 85 | 0.96 | 32.5 |
三菱HCキャピタル | 8593 | 616 | 8.0 | 0.68 | 31 | 5.03 | 40.4 |
業績や企業規模、株価推移、配当利回りなどは銘柄によって大きく違いましたが、20年以上継続して増配をしている事は単純に凄い事だと思います。
20年前といえば2000年前後ですし、花王に至っては1991年以降ずっと増配を続けていますので、その継続力は素晴らしいです。
ただ花王については最近の業績は低迷しており、配当性向も上昇傾向ですので今後連続増配が止まってしまう懸念点はあります。
また小林製薬も20年以上増配が続いていますが、配当利回りは1%付近と高配当株としては物足りない水準です。
SPKの企業規模は今回検証した銘柄の中では少し小さくはありますが、業績は安定しており配当利回りも3%を超えていますので高配当株として購入を検討できる水準です。
リコーリースと三菱HCキャピタルは既に保有していますので今回は敢えて触れませんが、このリース2銘柄とSPKが今回検証した5銘柄のなかでは購入を検討したい銘柄かなというところです。
20年以上増配を継続している5銘柄についてはYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧ください。
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