今回は昨年末時点の全市場配当利回り上位10銘柄の投資判断を行いたいと思います。配当利回りの高さだけでなく、会社の現状と今後踏まえ高配当株銘柄として投資可能か検証していきます。
全市場配当利回り上位10銘柄(2021年10月16日時点)
全市場配当利回り上位10銘柄の検証は2021年10月にも行っていますので、まずはその時の10銘柄を振り返ります。
順位 | 銘柄 | コード | 株価 | 予想配当 | 配当利回り | 評価 | 備考 |
1 | 明和産業 | 8103 | 788 | 115 | 14.59 | × | 急激な増配が一時的な可能性が高くNG |
2 | 日本郵船 | 9101 | 7460 | 700 | 9.38 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
3 | ㈱ベリテ | 9904 | 444 | 40 | 9.01 | × | ここ数年配当性向100%超 |
4 | 商船三井 | 9104 | 6700 | 550 | 8.21 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
5 | ㈱カノークス | 8076 | 1300 | 80 | 6.15 | 〇 | 配当性向50%で業績も安定傾向 |
6 | 乾汽船 | 9308 | 2237 | 132 | 5.90 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
7 | 極東貿易 | 8093 | 2461 | 145 | 5.89 | × | 特別配当で利回り上昇 |
8 | コナカ | 7494 | 340 | 20 | 5.88 | × | 業績不振 |
9 | ㈱NEW ART HOLDINGS | 7638 | 1204 | 70 | 5.81 | △ | 急激な増配で配当性向上昇傾向 |
10 | JT | 2914 | 2264 | 130 | 5.74 | 〇 | 業績回復傾向 |
昨年10月時点の上位10銘柄の中からはカノークスとJTをおすすめ銘柄にしています。
今回の上位10銘柄は10月時点と比較して4銘柄が入れ替わっていますので、新たな有望株はないか、また以前検証した銘柄も内容に変更がないか検証していきたいと思います。
それでは2021年12月30日時点の全市場配当利回り上位10銘柄を10位からみていきます。
10位 ミズホメディー(6.15%)
ミズホメディーは体外診断用医薬品や医療機器の開発・製造・販売を行う東証2部銘柄で、2021年に3回の業績上方修正を発表し、その度に増配も発表した事で配当利回りが上昇しています。
ミズホメディーはコロナの検査薬を販売しており、コロナ感染拡大により最終利益、配当ともに前期から約15倍の水準に大きく上振れしています。
業績、配当の振れ幅があまりにも大きく、また今後の業績はコロナの感染状況に影響を受ける部分も大きく先行きが見通しにくい為、中長期の高配当銘柄としては現状狙いにくいところです。
9位 ディア・ライフ(6.22%)
ディア・ライフは東京都内を中心に投資用マンションの開発、販売を手掛ける東証1部銘柄です。昨年11月発表の決算で今期配当予想を年間34円と前期から4円増配見込みで発表した事と新株予約権の発行で株主価値の希薄化警戒より株価が大きく下落した事により配当利回りが上昇しています。
業績好調の要因はホテルや商業用不動産の需要が急減した一方で、新しい生活様式の浸透により、物流施設をはじめ賃料の安定した住居系不動産、戸建て住宅に対する不動産ニーズは高い水準で推移しており、外資系ファンドを中心に余剰資金が日本の市場に流入している為としています。
配当方針は配当性向40%を目安にしており、今期配当見込みも現状40%の水準と無理をしている感じではありません。
コロナショックで減配した2020年以外は配当金も安定傾向で、現在の株価も新株発行後の希薄化目安約16%水準まで下がってきていますので、中長期投資銘柄として狙ってみても良いかもしれません。
8位 LAホールディングス(6.47%)
LAホールディングスは新築不動産販売を中心に手掛けるジャスダック市場銘柄です。
LAホールディングスは業績の上方修正の伴い昨年12月に年間配当130円を発表し配当利回りが上昇しています。
業績好調の要因はカンボジアの高級コンドミニアム引渡し及び賃貸レジデンスの売却等が売上に寄与としています。業績好調は素晴らしいですが、最終利益、配当ともに前期から3倍以上の伸びになっていますので、現在の状態が一過性のものでないか、もう少し様子を見たいところではあります。
7位 カノークス(6.48%)
カノークスは名証2部で中部が地盤の鉄鋼商社です。カノークスは昨年8月に業績の上方修正と同時に増配を発表した事に加え、最近は株価も下がり気味の為、配当利回りが上昇しています。
業績好調の要因は鋼材在庫の逼迫が顕在化し、鋼材市況が上昇していることに加え国内自動車生産が回復基調で、当初の予想を上回るペースで業績が推移しているとの事です。配当も年間50円予測から80円に増配し、今後の配当性向は50%を目安にするとの指針も発表しています。
出来高の部分で名証2部という事や自動車メーカーの減産、商品市況の動きなどは気になりますが、トヨタなどの自動車メーカーが主力客先で業績も安定傾向ですので中長期投資銘柄としてもアリかなという感じです。
6位 淺沼組 (6.60%)
淺沼組は関西系の中堅ゼネコンで東証1部銘柄です。
淺沼組は昨年11月に今期年間配当を363円と当初予測から103円増額し配当利回りが上昇しています。増配の要因は中期3ヵ年計画(2021年度~2023年度)における株主還元方針を修正した事としており、連結配当性向を従来の50%以上から70%以上に変更しています。今回の修正により2023年度の配当見込みも282円予想から395円へ大きく増額しています。
配当性向70%以上は少し高すぎな気もしますが、2023年度の配当見込みまで発表している点は企業の自信も感じますので高配当銘柄として狙ってみても面白いかもしれません。
5位 乾汽船(6.78%)、3位日本郵船(9.13%)、2位商船三井(9.37%)
昨年業績の大幅上方修正から大幅増配が続いた商船株からは今回も3銘柄がランクインしています。
一時期に比べると株価の動きも落ち着いた感じではありますが、配当利回りは依然高水準が続いています。
下記に2021年の商社3社増配推移をまとめていますが、去年の増配額がいかに大きい水準だったかが分かると思います。
商船3社の2021年増配額
- 乾汽船 51円→132円→157円
- 日本郵船 200円→700→800円
- 商船三井 150円→550円→800円
業績好調の要因は引き続きコンテナ船の旺盛な貨物需要と運賃上昇による大幅な増益に加え、鉄鉱石、石炭、穀物等の様々な資源を、梱包せずに大量にそのまま輸送するドライバルク船全般の好市況、自動車船の輸送台数回復に伴う損益改善等が貢献としています。
コロナからの経済回復需要にコンテナや人員の供給が追い付いていない状況が続いているようですが、業績、配当の振れ幅が大きく今後の見通しも不透明な部分が大きい為、中長期の高配当株銘柄としてはNGにしています。
4位 ベリテ(8.85%)
ベリテは宝飾品小売り大手で東証2部銘柄です。業績は安定していますが、ここ数年は配当性向が100%を超えており、現状の配当を今後も維持出来るか不透明な部分が大きい為、中長期投資銘柄としてはNGにしています。
1位 明和産業(11.84%)
第1位は前回と変わらず明和産業で配当利回りは唯一の10%超えです。明和産業は2021年に2回の増配を発表した事で配当利回りが上昇しています。
明和産業の増配は今年予定されている東証再編に絡み、プライム市場への選択方針決定を踏まえたものです。現状流通株式時価総額についてプライム市場への基準を満たしていない為、流通株式時価総額の向上に向けた施策を進めいていくとの事で、増配により株価を上げ時価総額を上げたい意向ですので、増配も一時的な可能性が高く現状の配当性向も200%を超えていますので中長期投資銘柄としてはNGになります。
まとめ
順位 | 銘柄 | コード | 株価 | 予想配当 | 配当利回り | 評価 | 備考 |
1 | 明和産業 | 8103 | 997 | 118 | 11.84 | × | 急激な増配が一時的な可能性が高くNG |
2 | 商船三井 | 9104 | 8540 | 800 | 9.37 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
3 | 日本郵船 | 9101 | 8760 | 800 | 9.13 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
4 | ベリテ | 9904 | 452 | 40 | 8.85 | × | ここ数年配当性向100%超 |
5 | 乾汽船 | 9308 | 2316 | 157 | 6.78 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
6 | 淺沼組 | 1852 | 5500 | 363 | 6.60 | 〇 | 2023年度の配当見込みまで発表 |
7 | カノークス | 8076 | 1235 | 80 | 6.48 | 〇 | 配当性向50%で業績も安定傾向 |
8 | LAホールディングス | 2986 | 2008 | 130 | 6.47 | △ | 業績、配当の伸びが大きく、もう少し様子を見たい |
9 | ディア・ライフ | 3245 | 547 | 34 | 6.22 | 〇 | 配当性向40%で配当金も安定傾向 |
10 | ミズホメディー | 4595 | 2358 | 145 | 6.15 | × | 業績・配当の増減が大きすぎ |
それでは今回紹介した10銘柄を表にまとめていますが、10位の銘柄でも配当利回りは6%を超える高い水準になっています。
その中から今回は淺沼組、カノークスをおすすめ評価にしています。ディア・ライフとLAホールディングスについては高配当銘柄として面白そうな存在ではあるのですが、両銘柄とも不動産関連銘柄であり、最近は恒大集団絡みの問題で不動産価格の下落懸念や長期金利上昇による借入金利上昇もあってかREIT銘柄の下落が続いていますので、株価の部分でももう少し様子を見たいところもあります。
コロナからの業績回復や株主還元意識の高まりで全体的な配当利回りは上昇していますが、急激な増配や配当性向が100%超えている銘柄は高配当銘柄として基本的にNGですので、業績回復や株主還元姿勢の高まりが一時的なものにならないか見極めながら引き続き銘柄検証を行っていきたいと考えています。
全市場配当利回り上位10銘柄の投資判断はYouTubeで動画版も投稿していますのであわせてご覧下さい。
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